突然ですが、この言葉をご存じでしょうか。
「彼を知り己を知れば百戦殆からず」
言葉の意味は、
『敵の実力や現状をしっかりと把握し、
自分自身のことをよくわきまえて戦えば、
なんど戦っても、勝つことができる』
ということです。
ここから転じて、
問題を解決するときも内容を吟味し、
自分の力量を認識したうえで対処すれば、
成功に近づけると考えられています。
行政書士試験でも同じことが言えます。
傾向を理解して、試験対策をする。
「とりあえず、まんべんなく勉強しよう」
というように思ってはいけません。
一生かかっても試験に合格はできません。
行政書士試験の傾向から戦略を考えましょう。
行政書士試験の出題傾向を知ることが合格の最短ルート
まずは、行政書士試験の出題数です。
出題形式ごとにまとめたのが下記の表です。
出題形式 | 内容 | 配点 | 総合点 |
五肢択一式 (ごしたくいつしき) | 5つの選択肢から1つの正解を選ぶ | 1問/4点 | 54問/ 216点 |
多肢選択式 (たしせんたくしき) | 決められた語句20個の選択肢から文章中 の空欄ア~エに当てはまる語句を選ぶ | 1問/8点 (1選択肢2点) | 3問/ 24点 |
記述式 (きじゅつしき) | 設問に対して40文字程度で解答を作る | 1問/20点 (部分点あり) | 3問/ 60点 |
上記の出題形式で試験が作られています。
全60問300点満点の試験になっているのです
さらに科目別に細かく傾向を見てみると、
≪法令五肢択一式≫
基礎法学: 8点/ 2問
憲 法 :20点/ 5問
行 政 法 :76点/19問
民 法 :36点/ 9問
商 法 :20点/ 5問
≪多肢選択式≫
憲 法 : 8点/ 4問
行 政 法 :16点/ 8問
≪記述式≫
民 法 :40点/ 2問
行 政 法 :20点/ 1問
≪一般知識五肢択一式≫
一般知識:56点/14問
行政書士試験というだけあって、
行政法の出題が際立って多い傾向にあります。
出題傾向が偏っている試験が行政書士なのです。
行政書士試験研究センターのHPを見ると合格基準が書かれています。
//行政書士試験研究センターより引用//
行政書士試験研究センター
(1) 行政書士の業務に関し必要な法令等科目の得点が、122点以上である者
(2) 行政書士の業務に関連する一般知識等科目の得点が、24点以上である者
(3) 試験全体の得点が、180点以上である者
//引用ここまで//
ここまでを整理すると、合格するためには、
1.行政法・民法が高配点(合計188点分)なので、得点源にする。
2.一般知識は24点/6問正解すればいい。
3.法令で156点以上得点できるようにする。
この3つが必要だということが分かりました。
配点と合格基準が分かれば、
どれだけ得点すべきかを考えればいいわけです。
「どう得点すればいいか、なんてわからないよ」
と、思ったかもしれませんが安心してください。
私の受験経験・指導経験から、各科目で、
どれだけ得点すべきかを考えました。
≪法令五肢択一式≫
基礎法学: 4点・・・ 1問/ 2問中
憲 法 :12点・・・ 3問/ 5問中
行 政 法 :64点・・・16問/19問中
民 法 :24点・・・ 6問/ 9問中
商 法 : 8点・・・ 2問/ 5問中
≪多肢選択式≫
多肢選択:20点・・・10問/12問中
≪記述式≫
記述問題:20点・・・ 1問/ 3問中
≪一般知識五肢択一式≫
一般知識:32点・・・ 8問/14問中
合計:47問/184点の正解で、合格することができます。
行政法と民法の配点が高いので、
得点源にしないといけないことが分かりますね。
行政書士試験を攻略するカギはたった3科目。
行政法、民法、一般知識だということを覚えてください。
傾向を分析するから勉強にメリハリがつき効率が良くなる
配点からわかったことは、次の二つでした。
・一般知識は24点とれば、足切りをまぬがれることができる。
・行政法と民法だけで188点と高配点なので、得点源にしなければならない
これを知っているか知っていないかで、
勉強にメリハリが付きます。
行政書士試験を突破するには、
一般知識の足切りをまぬがれて、
行政法・民法を得点源にする。
これを忘れないでください。
これほどまでに行政法の出題が多い試験なのに、
「行政書士は法律の資格だから、まずは憲法をマスターするぞ!」
というように行政書士試験の傾向を完全に無視して、
勉強するのはあまりにも非効率なことは一目瞭然です。
わからなくても、
「とりあえず、行政法をマスターしないと行政書士にはなれないな」
ということが傾向からわかるはずです。
大まかな傾向を知り、詳細な出題傾向を知る。
そして、傾向・配点を意識した勉強を進める。
これが、行政書士合格を最短で目指す黄金ルートなのです。
科目ごとの出題傾向を把握することでメリハリのある勉強ができる
さらに踏み込んで、科目ごとの出題傾向も押さえましょう。
働きながら行政書士試験に合格するならば、
極端なぐらいメリハリをつけなければ時間が足りません。
つまり、合格できる分だけの勉強をするのです。
あなたに余計なことをしている時間はありません。
基礎法学は基本無視していい|2問に時間をかけてはいけない
行政書士試験の基礎法学は、2問しか出題されないのと、
範囲が広すぎてカバーできません。
なので、基本的には無視しましょう。
他の科目を勉強するうちに、
行政書士試験ならではの出題傾向がわかるので、
基礎法学には目もくれず勉強することが賢明です。
憲法は人権と統治で勉強を変えろ|法律の読み方に慣れることが先
憲法はサラッと流してほしいところです。
法律を初めて勉強する人にとって、
法律特有の言い回しに慣れるため、
という目的をもって勉強しましょう。
行政書士試験での憲法の出題範囲は「人権」と「統治」です。
「人権」では、条文を応用した判例の割合を多く、
「統治」では、暗記分野の条文を徹底的に勉強する。
傾向から、こういった勉強が一番効果があります。
行政法こそ徹底的に傾向対策して得点源にしよう
一番出題が多い行政法はしっかり傾向対策しましょう。
この科目は憲法と考え方が似ており、
暗記分野と判例分野に傾向が分かれます。
暗記で対応できるのは、
「行政手続法」「行政不服審査法」「地方自治法」です。
一言一句間違えず、すべての条文を覚えてください。
行政書士試験では最も暗記に頼る分野になります。
そして、判例が多く使われるのは、
「行政事件訴訟法」、「国家賠償法」です。
理解が求められますが、慣れれば得点源にできます。
民法はとにかく基本に忠実に|難しい問題も基本ができていれば解ける
民法は1000条以上の条文があるので、
かなり勉強する範囲が広い科目です。
しかし、行政書士試験では、
その中の200条程度しか出題されません。
出題も一番ややこしくなる傾向が強い科目ですが、
基本を押さえていくことが絶対です。
条文を押さえて、
問題によって、どの要点が適用されるのか。
ひとつひとつ整理していく必要があります。
暗記に加えて、理解が必要な科目です。
判例が良く出てくる傾向にあります。
理解することに努めましょう。
民法の考え方は行政書士になった後も応用できますよ。
商法・会社法は余裕があれば学習する|時間をかけるべきは民法・行政法
行政書士の業務の一つに定款作成業務があるので、
この分野が出題されるのですが、
絶望的に範囲が広いんです。
そもそも手を出すべきではないと私は考えています。
しかし、まったく得点できないのも良くないので、
「会社設立」は、勉強ししましょう。
ただ正直なところ、何ができるのか予想ができません。
傾向分析するぐらいなら、行政法を勉強しましょう。
一般知識は勉強分野を見極める|法令・文章理解を中心に得点する
一般知識は、時事問題が良く出題される傾向にあります。
私が受験したときは、
「蟹工船の作者は次の5人のうちだれか」
という、もはや行政書士と関係ない問題もありました。
そのため、一般知識は水物と考え、
絶対得点できる分野に絞って勉強した方が得策です。
それが、「個人情報保護」と「文章理解」です。
「個人情報保護」は条文の勉強で得点できますし、
「文章理解」は国語の長文読解です。
毎年、出題傾向が似ているので対策しやすいはずです。
そのほかにやっておくことは、ニュースのまとめサイトを見ておくことと、
話題になっている情報通信用語の意味を知っておくことぐらいでしょう。
行政書士試験の勉強ばかりやっていて、
社会情勢を知らないとなってはいけませんから、
一日10分でもいいのでニュースを見る癖をつけて、世間を知っておきましょう。
予告メモ
※2023年9月28日の官報で行政書士試験の実施に関する告示の改正が公布されました。2024年度からの変更点は、「政治・経済・社会」分野は一般知識に一新され、「行政書士関連法(行政書士法、戸籍法、住民基本台帳法等)」分野を新しく出題するようになります。また、従来の一般知識科目は基礎知識科目に名称変更されます。当サイトでも順次勉強法の改善をしていきます。
参照:インターネット官報より
傾向を知らずして行政書士試験の合格はあり得ない
さて、試験の傾向を、かなり詳細に話してきました。
これで、
「行政書士になるんだから、憲法をマスターしなくちゃ!」
とはならないことを願っています。
一番勉強すべき科目は、絶対に行政法です。
行政法を制すものが行政書士試験を制します!
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