行政書士として開業したのに仕事がない。
この状態になると、
行政書士は食えない資格なのではないか。
と考えたくなることがあります。
しかし、「仕事がない」という結果だけでは、何を直せばよいか分かりません。
見るべきなのは、仕事がないという結果ではなく、依頼が成立するまでのどの工程が止まっているかです。
例えば、
- そもそも存在を知られていない
- 知られているが相談されない
- 相談は来るが見積へ進まない
- 見積は出すが受任されない
- 受任はあるが単発で終わる
では、打つ手が違います。
「仕事がない」を一つの原因で説明しない
行政書士の仕事がないとき、原因を一つに決めてしまうと修正を誤ります。
よくあるのが、
- 営業が苦手だから
- 資格の知名度が低いから
- 競争が激しいから
- AIで仕事が減ったから
- 地方だから
といった説明です。
これらが影響する場合はあります。
ただし、それだけでは、今どこを直せばよいかは分かりません。
まず、相談が成立するまでの工程へ分解してください。
行政書士の受任までを5段階に分ける
仕事が発生するまでを、ここでは次の5段階に分けます。
| 段階 | 観測すること |
|---|---|
| 認知 | 存在や業務内容を知ってもらえているか |
| 相談 | 困ったときに相談先として選ばれているか |
| 見積 | 相談から具体的な依頼条件へ進んでいるか |
| 受任 | 価格・信頼・対応範囲に納得して契約されているか |
| 継続 | 再依頼・紹介・周辺業務へつながっているか |
このどこで数字が止まっているかを見れば、修正する場所が見えます。
認知されていないなら、営業以前に存在を知られていない
最初に確認するのは、そもそも自分の存在が知られているかです。
ホームページを作った。
名刺を作った。
事務所を開いた。
これだけで、相談者に存在を知られるとは限りません。
確認するのは、
- 自分のWebサイトを見られているか
- 紹介者になり得る人に業務内容を伝えているか
- 地域や業界の中で何を扱う行政書士か知られているか
- 検索したとき、自分が何をする人か分かるか
です。
認知がないなら、受任率を改善する前に入口を増やします。
知られているのに相談されないなら、業務内容が伝わっているか見る
アクセスや接点はあるのに相談が来ない場合は、別の問題です。
このときは、「行政書士です」と伝えるだけでなく、何を依頼できるのかが分かる状態になっているか確認します。
相談者が知りたいのは、資格名よりも、
- 自分の問題を扱ってくれるか
- どこまで支援してくれるか
- 依頼すると何が楽になるか
- いつ相談すればよいか
です。
「行政書士に何ができるか」ではなく、「この相談者のどの問題を解決できるか」へ変換してください。
専門分野自体が曖昧な場合は、行政書士の仕事内容と専門分野の決め方から確認してください。
相談は来るのに見積へ進まないなら、案件化の条件を確認する
相談は来るのに、正式な依頼の話まで進まないこともあります。
この場合は、相談件数を増やすだけではなく、相談内容を分析します。
- そもそも有料で依頼する必要がない相談なのか
- 自分の業務範囲外なのか
- 相談者が必要性を理解できていないのか
- 依頼内容を具体化できていないのか
- 費用感を提示する前に終わっているのか
相談件数が多くても、受任可能な案件がほとんど含まれていなければ売上にはつながりません。
問い合わせ数ではなく、受任可能な相談が何件あるかを見ます。
見積を出しても受任されないなら、価格だけを疑わない
見積を出した後に断られると、「値段が高かった」と考えやすくなります。
しかし、理由は価格だけとは限りません。
- 依頼範囲が分かりにくい
- 何をしてくれるのか伝わっていない
- 納期や進め方が不明
- 他事務所との違いが分からない
- 相談者が自分でできると思っている
- 信頼関係が十分にできていない
可能性があります。
値下げする前に、相談から見積までの説明を見直してください。
安くすれば必ず受任できるわけではありません。
受任はできるのに売上が安定しないなら、単発構造を見る
仕事はあるのに、毎月売上が大きく変動する場合もあります。
この場合は「仕事がない」というより、受任が単発で終わっている可能性があります。
例えば、
- 申請が終わると関係が切れる
- 更新・変更の案内をしていない
- 別の許認可や周辺手続へ接続していない
- 紹介につながる関係を作れていない
状態です。
すべての業務を継続契約にする必要はありません。
ただし、仕事が終わった後に次の必要手続があるなら、依頼者へ伝えることはできます。
新規顧客だけを追い続ける前に、既存案件の後に何が起きるかを確認します。
仕事がないからといって、業務分野を次々変えない
受任が増えないと、新しい分野へ移りたくなることがあります。
建設業許可がだめなら相続。
相続がだめなら外国人。
外国人がだめなら補助金。
このように分野を増やし続けると、学習コストと営業コストだけが増えることがあります。
分野を変える前に、今の分野で、
- 認知が足りないのか
- 需要が少ないのか
- 相談から受任へ進んでいないのか
- 自分の提供内容が弱いのか
を確認します。
仕事がないという結果だけで、専門分野そのものを失敗と判定しないでください。
広告費や高額サービスを増やす前に、止まっている工程を確認する
仕事がないと不安になり、広告、ホームページ制作、営業支援、コンサルティングなどへ追加投資したくなることがあります。
しかし、認知が十分あるのに受任率が低い場合、広告を増やしても同じ問題が拡大するだけかもしれません。
逆に、受任率は高いのに相談件数が少ないなら、認知を増やす投資には意味があります。
支出は、不安を減らすためではなく、止まっている工程を改善するために使います。
開業後の資金管理については、行政書士開業後に資金が尽きる前に確認することも参照してください。
受任数だけでなく「相談から受任まで」を記録する
仕事が増えない原因を判断するには、記録が必要です。
最低限、次の数字を残しておくと分析しやすくなります。
- 問い合わせ件数
- 相談件数
- 見積件数
- 受任件数
- 失注件数
- 紹介元
- Webサイトなど問い合わせ経路
- 再依頼・紹介件数
例えば、問い合わせ10件のうち相談へ進むのが2件なのか。
相談10件のうち見積が2件なのか。
見積10件のうち受任が1件なのか。
同じ「月1件受任」でも問題の位置が違います。
最終結果だけでなく、途中の数字を観測してください。
行政書士の仕事がない状態を5つに分けて修正する
| 止まっている場所 | 最初に見直すこと |
|---|---|
| 認知 | 誰に何の専門家として知られているか |
| 相談 | 相談者の問題と提供業務が接続しているか |
| 見積 | 受任範囲・必要性・費用を具体化できているか |
| 受任 | 価格、信頼、説明、進め方に問題がないか |
| 継続 | 更新・変更・紹介・周辺業務へ接続できるか |
一度に全部変えないでください。
最も大きく止まっている工程を一つ決め、そこだけ修正します。
その後、数字が変わったか再度確認します。
「行政書士は仕事がない」と資格全体の結論にしない
自分の事務所で受任が少ないことと、行政書士という職業全体に仕事が存在しないことは同じではありません。
逆に、他の行政書士が仕事を取れているから、自分も同じ方法で取れるとも限りません。
地域、業務分野、顧客、経験、営業経路、価格など条件が違います。
大きな一般論へ逃げず、自分の事務所で実際に起きている数字から判断してください。
まとめ|仕事がないなら、受任までの工程を一つずつ見る
行政書士として仕事がないとき、「資格が悪い」「営業が苦手」と一つの原因で説明しないでください。
- 認知されているか
- 相談されているか
- 見積へ進んでいるか
- 受任されているか
- 再依頼・紹介・周辺業務へ続いているか
この順番で確認します。
「仕事がない」は診断結果ではありません。受任工程のどこかが止まっているという観測結果です。
止まっている場所を一つ見つけて修正し、その結果をもう一度観測してください。
行政書士の仕事内容全体へ戻る場合は、行政書士の仕事内容と専門分野の決め方を確認してください。