特定行政書士とは、行政書士のうち、所定の法定研修を修了し、許認可等に関する行政庁への不服申立て手続を取り扱える行政書士です。
通常の行政書士が行う許認可申請などに加えて、一定の範囲で、
- 審査請求
- 再調査の請求
- 再審査請求
- その他の行政庁に対する不服申立て
について代理し、その手続で官公署へ提出する書類を作成できます。
2026年1月1日には改正行政書士法が施行され、特定行政書士が扱える不服申立ての範囲も拡大しました。
ただし、「行政書士試験に合格すれば自動的に特定行政書士になる」わけではありません。
まず行政書士として登録し、その後、日本行政書士会連合会が実施する特定行政書士法定研修を修了する必要があります。
特定行政書士ができること
特定行政書士の中心となる業務は、許認可等に関する行政不服申立てです。
例えば、事業者が行政庁へ許可申請をしたものの、不許可処分を受けたとします。
その処分について行政不服審査制度を利用できる場合、特定行政書士は対象となる範囲で依頼者を代理し、不服申立て手続や提出書類の作成を行えます。
つまり、
- 許認可申請を行う
- 行政庁から処分を受ける
- その処分に不服がある
- 行政不服申立てによる救済を検討する
という行政手続の後半まで関与できる制度です。
申請手続だけでなく、行政処分を受けた後の権利利益の救済まで扱えることが、通常の行政書士との大きな違いです。
2026年の法改正で特定行政書士の業務範囲が広がった
特定行政書士制度では、2026年1月1日に大きな変更がありました。
改正前は、特定行政書士が不服申立てを代理できるのは、行政書士が実際に作成した官公署提出書類に係る許認可等が前提となっていました。
つまり、不服申立ての前段階で行政書士が申請書作成に関与していることが必要でした。
2026年施行の改正法では、この範囲が、行政書士が「作成することができる」官公署提出書類に係る許認可等へ変更されました。
このため、申請者本人が申請書を作成した場合など、行政書士が申請段階へ関与していなかった案件についても、行政書士が作成できる書類に係る許認可等であれば、特定行政書士が不服申立てを扱える範囲に入り得ます。
「自分が申請書を作った案件だけ」から、「行政書士が作成できる申請書に係る案件」へ対象が広がったと整理すると分かりやすくなります。
特定行政書士なら、すべての争いを代理できるわけではない
業務範囲が拡大したからといって、特定行政書士があらゆる法律紛争を代理できるわけではありません。
特定行政書士制度で対象になるのは、行政書士が作成することができる官公署提出書類に係る許認可等についての、行政庁に対する不服申立て手続です。
また、行政書士業務自体も、他の法律によって制限されているものを取り扱うことはできません。
裁判所における訴訟代理とは別の制度です。
「特定行政書士になれば弁護士と同じことができる」と考えないでください。
行政書士と弁護士など他士業との業務範囲は、それぞれの法律に基づいて確認する必要があります。
特定行政書士になるには、まず行政書士として登録する
特定行政書士法定研修を受けられるのは、行政書士です。
2026年度の募集要項でも、受講資格は「申込み時点において行政書士名簿に登録されている行政書士」とされています。
そのため、行政書士試験に合格しただけの段階から、直接特定行政書士になることはできません。
- 行政書士となる資格を得る
- 行政書士名簿へ登録する
- 特定行政書士法定研修を受講する
- 所定の考査で基準へ到達する
- 研修を修了して特定行政書士となる
という順番です。
試験合格後の登録自体から迷っている場合は、行政書士試験合格後の進路から確認してください。
特定行政書士法定研修では何を学ぶのか
特定行政書士法定研修は、不服申立て業務に必要な知識と実務能力を身につけるための研修です。
2026年度の募集要項では、講義は18時間で、次の分野などが扱われています。
- 行政法総論
- 行政手続制度
- 行政手続法
- 行政不服審査制度
- 行政不服審査法
- 行政事件訴訟法
- 要件事実・事実認定
- 特定行政書士の倫理
講義を受けるだけではなく、考査もあります。
2026年度は30問の択一式による考査が行われ、講義科目の理解度が確認されます。
特定行政書士は名称を申請するだけで得られるものではなく、法定研修と考査を通じて、不服申立てに必要な知識・能力を確認する制度です。
2026年度の法定研修は受講料8万円
2026年度の特定行政書士法定研修募集要項では、受講料はテキスト代を含めて80,000円です。
同年度は、VODによる講義を所定期間に受講し、その後、全国一斉の考査を受験する方式になっています。
ただし、研修日程、申込期間、受講料、考査方法などは年度によって変更される可能性があります。
受講する年度の日本行政書士会連合会の募集要項を必ず確認してください。
特定行政書士は、行政書士になったら全員が取るものではない
行政書士として登録したら、全員がすぐ特定行政書士を目指す必要があるわけではありません。
判断するときは、自分が扱う業務と不服申立てとの接続を確認します。
例えば、
- 許認可業務を中心に扱う予定がある
- 不許可処分を受けた後まで依頼者を支援したい
- 行政不服審査制度を業務へ組み込みたい
- 今後の専門分野と不服申立てが接続する
のであれば、取得を検討する意味があります。
一方で、現在扱う予定の業務と行政不服申立てとの接点がほとんどないなら、開業直後から最優先にする必要があるとは限りません。
「上位資格だから取る」のではなく、自分の業務で必要な機能かどうかから判断してください。
許認可申請から不服申立てまで、どこを業務にするか考える
特定行政書士制度の価値は、単に肩書きが一つ増えることではありません。
通常の許認可申請と、その後の行政不服申立てを、自分の業務の中でどう接続するかにあります。
だから特定行政書士を検討するときは、
- 自分が扱う予定の許認可業務を決める
- その業務でどのような行政処分が起こり得るか確認する
- 不服申立てまで対応する必要性を考える
- 必要なら法定研修を受講する
という順番で考えると整理しやすくなります。
行政書士としてどの業務分野を選ぶのかから考えたい場合は、行政書士の仕事内容と専門分野の決め方へ進んでください。
まとめ|特定行政書士は、不服申立てまで扱うための業務拡張
特定行政書士は、通常の行政書士とは別の試験資格を最初から取る制度ではありません。
- まず行政書士として登録する
- 特定行政書士法定研修を受ける
- 考査で所定の基準へ到達する
- 許認可等に関する行政不服申立てまで業務範囲を広げる
2026年の法改正によって、行政書士が申請段階に関与していなかった案件も含め、行政書士が作成することができる書類に係る許認可等まで対象が広がりました。
特定行政書士になるかどうかは、肩書きではなく、自分の業務で不服申立てまで扱う必要があるかから判断してください。
登録・開業全体の流れへ戻る場合は、行政書士の開業総合案内を確認してください。