半年~1年の勉強で取得できる行政書士。
チャレンジのしやすさから、
毎年4万人以上が受験をします。
合格すれば研修いらずで独立開業ができ、
年収1000万円も可能と紹介されるため、
士業の中でも非常に人気で、
様々な人が受験する資格です。
一方で、
「行政書士の勉強は時間の無駄」
と言う人をネット上でも多く見かけます。
資格の中でも行政書士は、
「役に立つ」と主張する人と、
「時間の無駄だからやめておけ」、
と言う人に二極化しやすいんです。
むしろ、時間の無駄と言う人の方が多い印象です。
なぜ、人気資格なのに、
「やめておけ」「時間の無駄」
と言われているのか。
行政書士の資格の特徴が、
意見を二極化させているのです。
行政書士の取得が時間の無駄と言われる6つの理由
行政書士の資格取得が時間の無駄と言われる理由は6つあります。
■ 誰でも取れる資格
■ 合格率が低い
■ 就職の役に立たない
■ 独立開業しても稼げない
■ 行政書士の勉強が実務に役立たない
■ AIに仕事を取られるから将来性がない
本当に行政書士の勉強が時間の無駄なのか、
理由を解説しながら私の意見を述べていきます。
誰でも取れる資格
「行政書士は誰でも取れる資格だ」
「簡単な資格を勉強しても時間の無駄」
と言う人がいます。
何を言っているんだと思いますが、
昔の行政書士試験は合格率も高く、
過去問を暗記するだけで解ける、
文字通り誰でも取れる資格だったんです。
昭和までの行政書士試験の合格率は、
50%と今よりも合格しやすい、
やさしい試験でした。
主婦が片手間に取得する資格、
という印象さえ持たれていたんです。
しかし、1990年に入って、
行政書士試験は徐々に難化し、
今では合格率10%の国家資格になりました。
半年~1年で結果が出るとはいえ、
500時間以上は勉強する必要があります。
中には1000時間以上勉強して不合格になり、
何年も試験合格に向けて勉強している人もいます。
決して誰でも取れる資格ではありません。
メディアの印象操作で誰でも取れると思い込んでいる人がいる
カバチタレ!というマンガをご存じでしょうか。
行政書士を題材にした内容で、
ドラマ放映もなされ話題になりました。
行政書士人気の火付け役でもあるんです。
すでに難関資格となっていた行政書士ですが、
TVCMで行政書士講座も宣伝が頻繁に行われました。
資格ビジネスに関わる企業が、
受けやすい、合格しやすい資格と、
強烈に宣伝したことで、簡単な試験だと、
視聴者に印象付け、認知度を高めた経緯があります。
CMの印象が強く残っている人は、
行政書士は簡単だと思っているでしょう。
実際に受験してみて、その難易度に頭を抱えるのですが…。
行政書士が有名資格になったのは、
TVCMの影響が大きいですが副産物も残しました。
試験を受けたことのない人が、
「行政書士なんて時間の無駄」と発言する、
キッカケになったことは間違いありません。
合格率が低い
今の行政書士試験の難しさから、
「受験はやめておけ」と言う人もいます。
合格率10%ということは、
10人に9人は不合格になる試験です。
合格する確率も低い試験に、
1年も勉強時間を割くのは、
時間の無駄だと考えての発言でしょう。
ただ、一つだけ疑問が残ります。
行政書士試験は180点取れば合格できる、
絶対評価の試験なんです。
試験の難易度だけで、
180点を取れる人が毎年10%に留まる、
なんてことがあり得るでしょうか。
受験者の7割以上は勉強法を間違っているか本気じゃない
180点取れば合格になる行政書士試験。
4万人も受験者がいるのに、
合格率も毎年10%になるのは、
試験の難易度だけでは説明がつきません。
もっと多くの合格者がいても良いはずです。
私が思うに、誰でも受けることができ、
年1回の試験であることに理由があります。
行政書士試験には受験資格が不要です。
年齢・経歴・国籍問わず誰でも受験できます。
中には申込み〆切直前に申し込む人もいるでしょう。
法律初心者が受験生に多いのが行政書士の特徴です。
十分な勉強時間が取れず不合格になる人が多いのです。
今では行政書士の予備校も多数ありますが、
全員が講座に申し込んで勉強しているわけではありません。
正しい勉強法を知らずに点数が上がらず、
勉強に対するモチベーションも下がっていき、
1年間の勉強を続けられない人が多いんです。
行政書士試験は中学生も合格できる試験です。
勉強した時間を無駄にしないためにも、
正しい勉強法を知り、勉強環境を整えることが、
資格取得には必要になるのです。
就職の役に立たない
行政書士は独立開業型の資格です。
試験に合格すると、
実務経験を積むことなく、
事務所を開業することが強みです。
逆に言えば、
開業しなければ活用できません。
就職するにしても、
就職活動で十分なアピールにならなかったり、
就職しても法律業務に関われなかったりします。
資格を生かせる機会がないため、
行政書士取得は時間の無駄と言われるのです。
資格取得は武器の一つである
行政書士に関わらず、
資格があるから就職が有利とはなりません。
就職活動の面接は、
一芸に秀でていることよりも、
総合的な人物像を判断しています。
行政書士の資格を持っていることで、
自分のどんな強みがアピールできるのか、
と言う目線で面接内容を組み立てると、
自分自身を明確にアピールできます。
また行政書士は、
法律資格の基礎的知識を学べるので、
日常生活で知識が役立つこともあります。
資格があるからすごい、ではなく、
資格を取ってどんな将来を描くかを考えましょう。
独立開業しても稼げない
行政書士は稼げない資格としても有名です。
日本行政書士会連合会で、
令和5年度の業務成績について、
アンケート集計した結果を掲載していました。
対象者は以下の通り
職業属性 | 人数 | 割合(R5) | 割合(H30) |
行政書士専業 | 2,292名 | 74.3% | 52.0% |
他資格兼業 | 758名 | 24.6% | 47.0% |
未回答 | 34名 | 1.1% | 1.0% |
合計 | 3,084名 | 100.0% | 100.0% |
平成30年より令和5年の方が、
行政書士専業の割合が増えているのが、
興味深い結果になっています。
行政書士専業の人が多い中、
どれだけ稼げるのかが気になります。
年収分布は以下の通り
年商売上額 | 人数 | 割合(R5) | 割合(H30) |
500万円未満 | 2,370名 | 76.8% | 78.7% |
1,000万円未満 | 330名 | 10.7% | 11.3% |
2,000万円未満 | 146名 | 4.7% | 5.3% |
3,000万円未満 | 57名 | 1.8% | 1.8% |
4,000万円未満 | 22名 | 0.7% | 0.8% |
5,000万円未満 | 19名 | 0.6% | 0.5% |
1億円未満 | 33名 | 1.1% | 0.8% |
1億円以上 | 17名 | 0.6% | 0.3% |
未回答 | 90名 | 2.9% | 0.4% |
合計 | 3,084名 | 100.0% | 100.0% |
一番多いのは500万円未満の価格帯です。
サラリーマンでも平均年収400万円なので、
行政書士専業でも稼げるのかなという印象です。
高収入になるほど人口は少なくなりますが、
1億円以上稼いでいる人がいるのを見ると、
夢も期待も大きくなりますね。
一点気をつけたいのは、
このアンケートは一部の回答であることです。
5万1千人以上の行政書士がいる中で、
たったの3,084人しか回答していません。
全体の6%の状況しかわかっていないのです。
残りの94%はアンケートに参加していません。
全員が参加したら統計結果も変わるはずなので、
参考程度にとどめておいた方が良いです。
稼げない人もいれば稼げる人もいる、
というのが行政書士の実情なので、
稼げないという声に惑わされないようにしましょう。
行政書士の廃業率は90%以上という噂は本当か
「行政書士は廃業率90%以上だからやめておけ」
廃業率が高いと言われると、
なんだか不安になりますよね。
日本行政書士会連合会では、
月間日本行政を毎月発行しており、
登録者数の変動を掲載しています。
1年間の変動を見てみましょう。
年月 | 登録者数 | 新規登録者数 | 廃業者数 | 新規登録者 に対する廃業率 | 総廃業率 |
2023年2月 | 51,267名 | 157名 | 145名 | 92.4% | 0.283% |
2023年3月 | 51,041名 | 195名 | 421名 | 215.9% | 0.825% |
2023年4月 | 51,312名 | 405名 | 134名 | 33.1% | 0.261% |
2023年5月 | 51,594名 | 401名 | 119名 | 29.7% | 0.231% |
2023年6月 | 51,749名 | 302名 | 147名 | 48.7% | 0.284% |
2023年7月 | 51,930名 | 304名 | 123名 | 40.5% | 0.237% |
2023年8月 | 52,059名 | 287名 | 158名 | 55.1% | 0.304% |
2023年9月 | 51,973名 | 176名 | 262名 | 148.9% | 0.504% |
2023年10月 | 52,015名 | 209名 | 167名 | 79.9% | 0.321% |
2023年11月 | 52,060名 | 170名 | 125名 | 73.5% | 0.240% |
2023年12月 | 51,980名 | 161名 | 241名 | 147.9% | 0.464% |
2024年1月 | 51,996名 | 188名 | 172名 | 91.5% | 0.331% |
※総廃業率は、廃業者数÷登録者数で算出
上記の表に1項目だけ嘘があります。
「新規登録者数に対する廃業率」です。
日本行政書士会連合会の廃業者は、
新人なのかベテランなのかがわかりません。
そのため、数字も根拠がありません。
なぜ行政書士は廃業率90%以上という話が出るのか。
おそらく中小企業白書で、
ベンチャー企業の生存率が6.3%である、
という統計が発表されていることが理由です。
≫出典:中小企業庁「中小企業のライフサイクル」
行政書士事務所といえど、
独立開業すれば個人事業主です。
一般的な会社の廃業率に合わせて、
行政書士は廃業率が高い、
と言っているに過ぎません。
実際の廃業率は1%にも満たないのですから。
行政書士の勉強は実務に役立たない
ぐうの音も出ない正論です。
必死で行政書士の資格を取得しても、
試験勉強の内容が直接仕事に役立つ、
ということはありません。
これは行政書士の業務範囲が広いからです。
色々な業務を行うための、
基礎知識を試験で身につけて、
仕事の知識は業務の中で覚える、
というのが行政書士のやり方です。
ただ、試験勉強が時間の無駄とは思えません。
行政書士の業務である、
許認可申請、契約書作成など、
法律を正しく読めなければ仕事になりません。
専門分野を身につけるために、
基礎知識を試験で身につけるんだ、
という気持ちで勉強に取り組むことが、
活躍するために必要なことです。
法改正にも対応していく必要がある
行政書士が専門にするのは法律なので、
毎年の法改正に対応していく必要があります。
試験勉強の知識が使えなくなる日が来るのです。
常に情報収集をしながら、
スキルアップを図る必要があります。
行政書士を職業にしても、
生涯かけてスキルアップする必要があることを、
心に留めて活動できるようにしていきましょう。
AIに仕事を取られる
2023年にchatGPTがリリースされ、
官公庁でもAIを取り入れるようになりました。
AIの進化には目を見張るものがあります。
書類作成が仕事である行政書士にとって、
AIは仕事を奪われる一番の脅威である、
といってもいいでしょう。
書類作成代行だけをしているならば、
AIに仕事を取られる日は早いと思います。
専門的知見からのコンサルティングを求められている
行政書士が扱える書類は1万種を超えると言われます。
しかし、実際に稼ぐためには、
数ある分野から自分の専門性を高めて、
質の高い仕事を行う必要があります。
街の法律家と言われるように、
依頼者のニーズを的確に汲み取り、
書類に反映させていく必要があります。
ある意味ここが腕の見せ所なのです。
人とのやり取りから生まれる価値は、
AIには生み出せないものだと思います。
より専門性を高め、
求められるものを価値提供する。
依頼者が気づいていなかったニーズにも、
答えて仕事をしていくことが求められています。
ひとつの仕事から、
包括的にコンサルティングまでできる、
行政書士が今後活躍するのだと感じています。
本当に時間の無駄になるケースがある
絶対に時間の無駄になるケースがあります。
行政書士の取得のために勉強していたのに、
受験をしない、受験をやめてしまうことです。
1年の勉強で結果が出るとはいえ、
長期間の勉強に息苦しさを感じて、
受験すらやめてしまう人がいます。
挑戦をやめてしまったら、
それこそ時間の無駄です。
行政書士試験は不合格者も多いため、
何度も受験しているうちに、
やる気がなくなっていく人もいます。
正しい勉強法を知ることで合格できます。
今まで勉強した時間を無駄にしないためにも、
合格するためのノウハウを学んで、
資格取得できるように取り組みましょう。
≫市販のテキストで合格を目指す人は私の勉強法をお伝えします。
≫予備校を活用して合格を目指す人は私が厳選した講座を参考にしてください。
行政書士の勉強は時間の無駄にはならない
行政書士にならなければ、
資格を取得しても意味がない、
という人も一定数います。
行政書士の取得は簡単ではありませんが、
合格することで得られるものも多くあります。
■ 合格したという自信がつく
■ スケジューリング能力が身につく
■ 日常に関する法律知識が身につく
■ いつでも独立できるチャンスがある
働きながら合格するには、
効率よく勉強していく必要があります。
自分で決めた予定をこなしていく力は、
開業した後も特に求められる力なので、
行政書士試験の勉強は知識だけでなく、
日常生活にも良い影響を与えてくれます。
諦めない限り、
資格取得が無駄になることはありません。
行政書士の取得をおすすめする人
時間の無駄にならないために、
行政書士取得をおすすめするのは以下の人です。
■ 目的が明確である人
■ 地道な努力ができる人
■ 行政書士の価値をわかっている人
目的が明確である人
持っているだけで評価される。
合格したから能力を評価される。
資格があるから評価されることは、
世間的に珍しいことです。
大切なことは、
資格を取得して何をしたいかです。
それが資格を生かすことにつながります。
行政書士の資格を取得して、
スキルアップをしたいのか、
独立開業をしたいのかは、
あなた次第です。
なぜ行政書士でなければいけないのか、
その目的を明確にすることで、
挫折にも勝てる状況が作れます。
地道な努力ができる人
半年~1年で結果が出るといっても、
実際に勉強すると途方もなく感じます。
合格までのスケジュールを作り、
毎日コツコツと勉強を続けられることが、
合格に一番大切なことです。
地道に努力することは、
行政書士になってからも必要です。
毎年法改正がある中で、
常に最新の知識を持って、
専門性を高めていくには、
日々の努力が欠かせません。
知識にどん欲になり、
勉強を継続できるあなたなら、
行政書士の取得も夢ではないでしょう。
行政書士の価値をわかっている人
世間に何が求められているのか、
行政書士の価値がわかっていると、
資格取得にも身が入ります。
ただの書類代行で収まるのか、
依頼者のニーズをくみ取り、
必要なサービスを提供できるのか、
それを決めるのはあなた自身の想いです。
行政書士が持つ職業の価値がわかっている人は、
ぜひ、資格取得に向けて取り組んでください。
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