サラリーマンから法律職への転身を考える際、法律事務所での勤務経験は有益に思えます。しかし、現実はブラック労働やパワハラなどもあるため、慎重な検討が必要です。この記事では、法律事務所での勤務を勧められない理由や注意すべき事務所の特徴、失敗しない事務所の選び方を解説します。
記事を読めば、法律事務所で働く際の注意点を把握でき、行政書士試験の学習と両立しやすい職場選びに役立ちます。法律事務所で働きながら行政書士資格の取得を目指すなら、勤務条件や職場環境を慎重に見極めることが重要です。
法律事務所で働くのはやめた方がいいと言われる理由

法律事務所で働くのはやめた方がいいと言われる理由は、以下のとおりです。
- クセの強い弁護士が多い
- 雑用ばかりでスキルが向上しない
- 給与が低く、福利厚生がない
クセの強い弁護士が多い
弁護士事務所には個性的な弁護士が多く在籍しています。神経質で細部にこだわる人が多く、文書の書式や表現に対して極めて厳格な要求をする場合があります。短気で感情的な弁護士も存在するため注意が必要です。特徴的な弁護士の傾向として、以下の点が挙げられます。
- 自分の考えに固執する
- 独特の言葉遣いをする
- 完璧主義である
- 一方的なコミュニケーションを取る
- 独自のこだわりがある
法的思考に慣れている弁護士は、日常会話でも論理的な返答を求める場合があります。気分によって態度が変わる弁護士もいて、対人関係のストレスが大きくなりがちです。独立前に法律事務所で経験を積む場合は、職場環境の特性を把握しておきましょう。
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雑用ばかりでスキルが向上しない

法律事務所で働く大きな問題点は、雑用ばかりで本当に必要なスキルが身に付かない点です。法律事務所での業務内容は、実際には専門的な法律知識を活かす機会よりも、単純作業が中心となる場合が多い傾向にあります。日常的に以下に挙げるような雑務が発生します。
- コピー取りや書類整理
- 来客対応や電話応対
- 弁護士の補助的業務
- データ入力や資料作成
日常的な雑務は行政書士試験の内容や、将来の開業に直結するスキルとはほとんど関係がありません。弁護士の指示を待つ受け身の業務が中心となり、主体的に法律知識を深める機会が極めて限られます。忙しさのあまり、試験勉強の時間が確保できない点も問題の一つです。
残業が常態化している事務所では、帰宅後の試験勉強時間を確保するのも困難です。事務作業のスキルは向上しても、行政書士として必要な書類作成や申請業務の経験はほとんど得られないケースが多くあります。
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給与が低く、福利厚生がない
法律事務所で働く場合、給与水準が低く福利厚生が十分でないことが大きな問題です。法律事務所の初任給は一般的に16万円前後と低めに設定されています。経験を積んでも昇給幅が小さい場合がほとんどで、賞与が少なかったり、まったく支給されなかったりすることも珍しくありません。
社会保険や退職金制度がないことも多く、中には残業代未払いの事務所も存在します。待遇面の問題は、将来的な経済的安定を考えるうえで大きな不安要素の一つです。勉強に集中するための経済的・時間的余裕を奪ってしまう可能性も考えられます。
やめたほうがいいブラックな法律事務所の特徴

やめたほうがいいブラックな法律事務所の特徴は、以下のとおりです。
- 基本給が低すぎる
- 労働条件の説明をしてもらえない
- 職場の雰囲気が悪い
- パワハラが横行している
- 非弁行為の噂がある
基本給が低すぎる
多くの法律事務所では、一般企業と比較して著しく低い基本給が設定されています。月給15万円程度の事例も珍しくなく、生活を維持するのも難しい状況です。能力や経験にかかわらず、一律の低い給与設定をしている事務所が多い傾向にあります。
多くの法律事務所では給与交渉の余地がほとんどありません。低賃金を「経験を積める」などの名目で正当化している場合もあります。残業や休日出勤が多いにもかかわらず、手当が支払われない状況では、働く人のモチベーションが著しく低下します。
実質的な時給が最低賃金を下回るケースもあり、弁護士の裁量で給与が決まるのが一般的です。
労働条件の説明をしてもらえない

労働条件が明確に説明されないことは、ブラック法律事務所の大きな特徴です。労働基準法では、雇用主は労働者に対して労働条件を明示する義務があります。労働条件の明示を怠る事務所は要注意です。以下の場合は警戒してください。
- 労働条件が口頭説明のみ
- 労働時間や休日が曖昧
- 抽象的な雇用契約書
- 質問への回答が不明確
- 条件説明の先延ばし
労働条件通知書を渡さなかったり、内容をよく読む時間を与えずに署名を急かしたりする事務所は注意しましょう。後から「聞いていた条件と違う」などと、トラブルに発展する可能性が高まります。
職場の雰囲気が悪い
職場の雰囲気が悪いと、毎日の仕事が苦痛になり、行政書士試験の勉強にも悪影響を及ぼします。職場環境が悪いと心身ともに疲弊してしまうため、職場環境の見極めが重要です。職場環境が悪い法律事務所には、以下の特徴があります。
- スタッフ間のコミュニケーション不足
- 険悪な人間関係
- 新人のサポート不足
- 一方的な指示
- 高い離職率
基本的なコミュニケーションが欠如した職場では、仕事の質問や相談もしづらく、孤立感を感じる場合もあります。雰囲気の悪い職場では、ミスに対して責めるだけで建設的なフィードバックがない場合があります。成長の機会が得られず、常に緊張と不安を抱えながら働くのは心身の健康に良くありません。
休憩時間がバラバラで交流の機会がない職場や、飲み会に嫌々参加している雰囲気がある職場も要注意です。チームワークよりも個人プレーが重視される風土や、弁護士が事務員を下に見る態度が見られる職場では長く働けません。仕事と勉強の両立を目指すなら、心理的な負担が少ない職場環境を選びましょう。
» 行政書士の仕事内容とは?業務内容から必要なスキルまで解説
パワハラが横行している

法律事務所では、弁護士から事務員への暴言や人格否定が日常的に行われている場合があります。弁護士が事務員に対して「使えない」や「バカか」などの言葉を投げかけることも珍しくありません。些細なミスを大げさに責めたり、他のスタッフの前で叱責されたりする場合もあります。
パワハラが横行している環境では、メンタルヘルスに問題を抱える事務員が増え、退職者も多い傾向にあります。パワハラに対する相談窓口や対策が整備されていない法律事務所も多く、安心して働ける環境づくりが課題です。「法律のプロだから」などの理由で、権威的な態度が正当化されている風潮もあります。
非弁行為の噂がある
非弁行為とは、弁護士資格のない人が法律事務(法律相談・代理・交渉)を行うことです。法律事務所で非弁行為が行われていると、違法になるだけでなく、自身のキャリアにも悪影響を及ぼします。非弁行為が疑われる法律事務所には、以下の特徴があります。
- 弁護士不在での法律相談
- 事務員による書面作成・交渉
- 事務員主導のクライアント対応
- 事務員による報酬交渉
非弁行為が行われている法律事務所では、事務員が独断で法的判断を下している場合もあります。他にも弁護士が形式的に名前を貸しているだけの状態のケースも見受けられます。
失敗しない法律事務所の選び方

失敗しない法律事務所の選び方は、以下のとおりです。
- 面接で弁護士や事務員の人柄を観察する
- ホームページやブログで弁護士の考え方を確認する
- 事務所の口コミをチェックする
- 基本給や雇用契約書を隅々まで確認する
- 弁護士が過去に懲戒処分を受けていないか確認をする
- 事務員に弁護士の妻が入っていないか確認する
- 弁護士の数と事務員の数が極端に差がないか確認する
面接で弁護士や事務員の人柄を観察する
弁護士事務所での面接は、単に自分をアピールする場ではなく、働く環境や人間関係を見極めるのに重要です。弁護士や事務員の人柄は働きやすさに直結するため、面接中にしっかり観察しましょう。
面接時には、弁護士や事務員の話し方や態度に注目してください。丁寧で誠実な受け答えをしてくれるか、威圧的な態度を取っていないかをチェックしましょう。面接では質問に対する答え方から、相手の人柄や仕事に対する姿勢が見て取れます。
事務所内の雰囲気も重要なポイントです。職員同士のコミュニケーションや事務員の表情から、職場環境を推測しましょう。事務員の笑顔が多く、自然な会話が交わされている事務所は、風通しが良い職場である可能性が高まります。弁護士が事務員に対して敬意を持って接しているかも重要な手がかりです。
勤続年数が短い事務員ばかりの事務所は、離職率が高い可能性があるため、注意しましょう。
ホームページやブログで弁護士の考え方を確認する

弁護士の考え方や人柄を知るために、ホームページやブログは貴重な情報源です。事務所選びで失敗しないためには、事前にしっかりと調べましょう。弁護士のホームページやブログを見れば、価値観や仕事に対する姿勢がわかります。
法律事案へのアプローチ方法や考え方から、弁護士がどのように依頼者と向き合っているかが見えます。ブログの更新頻度も重要なポイントです。定期的に更新されているブログは、弁護士の熱心さや誠実さを示す良い指標になります。
一方で、更新が滞っている場合は、多忙すぎて依頼者に十分な時間を割けない可能性もあるため、注意が必要です。SNSでの発言や投稿内容からも、弁護士の人間性や価値観がわかります。
基本給や雇用契約書を隅々まで確認する
基本給や雇用契約書の確認は、法律事務所への転職を検討する際に最も重要なポイントです。給与面や労働条件をしっかり把握すれば、後々のトラブルを防げます。契約書には、以下の項目が明確に記載されているか確認してください。
- 基本給と残業代の計算方法
- 試用期間の有無と条件
- 賞与・昇給の有無
- 有給休暇の付与条件
- 残業時間の上限
- 社会保険の加入状況
行政書士試験の合格を目指す人は、勉強時間の確保が必要なため、勤務時間や休日出勤の扱いについても細かく確認しましょう。契約書に記載されていない口頭での約束は、後々トラブルの原因になるため注意してください。契約内容に不明点がある場合は、必ず採用面接時や入社前に質問して解消しましょう。
弁護士が過去に懲戒処分を受けていないか確認をする

弁護士の懲戒処分歴の確認は、良い法律事務所を選ぶうえで重要なポイントです。懲戒処分を受けた弁護士がいる事務所は、職場環境や倫理観に問題がある可能性が高い傾向です。弁護士懲戒処分検索センターのウェブサイトでは、「懲戒処分検索」と呼ばれるシステムが公開されています。
懲戒処分検索を使えば、弁護士の氏名から過去の処分歴を簡単に確認できます。各地方弁護士会でも所属弁護士の懲戒処分情報を公開しているため、合わせて確認してください。最近の懲戒処分事例までチェックできれば、事務所の現状をより正確に把握できます。
補完的な情報源として、弁護士ドットコムなどの口コミサイトで評判を調べるのも効果的です。
弁護士の数と事務員の数が極端に差がないか確認する
弁護士と事務員の数のバランスを確認することは、良い職場環境を見極める重要なポイントです。健全な法律事務所では、一般的に弁護士1人に対して、事務員が1〜2人程度の比率が保たれています。弁護士と事務員の数が極端に偏っている事務所は注意が必要です。
事務員が少ない場合、事務員一人ひとりの業務負担が過大になりやすく、残業や休日出勤が常態化している可能性があります。逆に、事務員の数が弁護士に比べて極端に多い場合は、事務所の経営が不安定である可能性も考えられます。事務員の入れ替わりが激しい事務所も避けてください。
バランスの取れた人員配置がされている事務所は、適切な業務分担と健全な労働環境が整っている証拠です。職場環境の良い事務所を選べば、働きながら行政書士試験の勉強を進めやすくなり、資格取得にもつなげやすくなります。
行政書士試験勉強を圧迫しないように注意

行政書士試験に合格したい人にとって、法律事務所での就業経験は必ずしも必要ではありません。法律事務所には多くの課題があり、働きながら効率的に試験勉強をするには適していない場合もあります。法律事務所での勤務においては、個性の強い弁護士との人間関係や雑務中心の業務により、行政書士試験の学習に支障をきたす場合があります。
早期開業への近道は、法律事務所での経験よりも、試験合格に直結する勉強に時間を使うことです。ブラックな環境に身を置かずに、自分のペースで着実に目標へ進みましょう。
» 行政書士の現状と将来性が期待される業務を紹介
» 行政書士に向いている人・向いていない人の特徴
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