本業を続けながら行政書士試験に合格し、すぐに独立開業することに不安を感じる方は多くいます。この記事では行政書士として副業する方法やメリット・デメリットを詳しく解説します。行政書士の副業を始めるには、本業の副業規定の確認と行政書士登録などが必要です。
記事を読めば、本業を続けながら行政書士として活動するための具体的なステップや業務内容がわかります。相続業務や車庫証明など、時間の融通が利く業務から始めましょう。
副業で行政書士の仕事をするメリット

副業で行政書士の仕事をするメリットは以下のとおりです。
- 独立開業など将来の準備ができる
- 失敗してもダメージが少ない
- 自宅で仕事ができる
独立開業など将来の準備ができる
行政書士として副業中に実務経験を積めば、本業を続けながら顧客基盤を徐々に構築できます。行政書士が独立開業するには以下の準備が必要です。
- 実務スキル
- 業務の流れやクライアント対応
- 得意分野と専門性
- 営業や集客のノウハウ
- 収入見込みの確認
- 人脈やネットワークの拡張
開業時に必要な事務所や環境をあらかじめ整えられるのも副業のメリットです。実際に仕事をしながらどのような設備が必要かを見極めることで、無駄な投資を避けられます。
» 行政書士の現状と将来性が期待される業務を紹介
失敗してもダメージが少ない

行政書士を副業から始めれば、万が一失敗しても最小限のダメージで済みます。本業の収入を維持したまま、経済的なリスクを抑えられるのが大きなメリットです。行政書士で独立に必要な資金は本業で稼いで準備できます。行政書士業務が上手くいかない場合は、本業に専念する選択肢が残されているため安心です。
行政書士を副業として始めることで、仕事に対する適性やモチベーションを見極める期間として活用できることも利点です。
自宅で仕事ができる
行政書士の仕事は自宅で完結できるため、副業として始めるのに最適です。自宅をオフィスとして活用することで、通勤時間の削減や初期費用を抑制できます。行政書士の仕事はPC作業が中心で、クライアントとのやり取りもオンラインツールが使えるので便利です。
行政書士に必要な環境はシンプルで、パソコンとプリンター、インターネット環境があれば基本的な業務がスタートできます。天候や交通機関の影響を受けないので、本業と両立しやすい特徴があります。
副業で行政書士の仕事をするデメリット

副業で行政書士の仕事をするデメリットは以下のとおりです。
- 行政書士資格で認められている業務の範囲内に限られる
- 本業と官公署の営業時間に差がある
- 本業も行政書士の業務も責任が伴う
行政書士資格で認められている業務の範囲内に限られる
行政書士として活動する際には、法律で定められた業務範囲を守らなければなりません。行政書士法第1条の2および第1条の3に定められた業務範囲を超えて活動することは法律違反になります。行政書士が認められている主な業務は、以下の3点です。
- 官公署に提出する書類の作成
- 提出手続きの代行
- 権利義務や事実証明書類の作成
弁護士の専門業務である訴状作成や法律相談、税理士の専門業務である税務書類作成などは行政書士の業務範囲外です。副業として行政書士業務を始める場合でも、報酬を得て業として行う以上は必ず行政書士資格が必要になります。書類作成だけでなく、関連する相談業務も無資格では行えません。
» 行政書士の仕事内容とは?業務内容から必要なスキルまで解説
本業と官公署の営業時間に差がある

官公署(役所や法務局など)は、基本的に平日の9~17時が営業時間です。副業で行政書士をする場合、本業の勤務時間と重なり時間の制約を受ける可能性があります。官公署の申請や相談は土日や祝日にはできないため、手続きのために有給休暇を取得する場合もあります。
本業と官公署の営業時間が異なることへの対策として、オンライン申請や代理人の活用がおすすめです。本業の時間内に対応が必要になった場合、本業の就業規則で外出制限がないか確認してください。時間管理のスキルは副業行政書士として成功するための鍵です。
本業も行政書士の業務も責任が伴う
本業と行政書士の業務を両立する場合、どちらにも責任を持って取り組むことが重要です。クライアントは依頼した仕事に対して質の高いサービスを期待しています。本業と行政書士業務の両立には適切な時間配分が欠かせません。クライアントからの信頼にも応えられるよう努めましょう。
納期遅延や品質不足があると、積み重ねてきた信頼を失う可能性があるので注意してください。行政書士として働くうえで守るべき重要な点は守秘義務や本業中の行政書士業務の禁止、体調管理などです。経験が浅いうちは、責任の重い案件は避けて徐々に経験を積みましょう。
専門外の案件は無理に引き受けず、断る勇気も必要です。業務上のミスが発生した場合に備えて、行政書士職業賠償責任保険への加入を検討すると安心です。行政書士職業賠償責任保険に加入しておけば、万が一のトラブルにも対応できます。
行政書士の副業で可能な業務内容

行政書士の副業で可能な業務内容には以下の種類があります。
- 相続業務
- 車庫証明業務
- 補助金申請業務
相続業務
相続業務は、行政書士の副業として需要が高く、収入が安定している分野です。相続に関する知識不足と煩雑な手続きに悩んでいる方が多く、専門家としてのサポートが重宝されるためです。相続業務には、遺産相続相談や手続き支援、遺言作成サポート、相続財産調査などがあります。
相続業務は平日の夜間や週末でも対応可能な種類が多いため、本業をしながらでも取り組みやすい特徴があります。特に相談業務や書類作成は、クライアントの都合に合わせて時間調整ができるので、本業と両立しやすい業務です。
車庫証明業務

車庫証明業務も行政書士として取り組みやすい代表的な業務です。自動車を購入したときの手続きなので、需要が多く安定しています。正式には車庫証明は自動車保管場所証明と呼ばれ、自動車の登録や変更時に必要な法的手続きです。自動車の所有者が適切な保管場所(駐車場)を確保していることを証明する重要な書類です。
車庫証明業務は、以下の流れで進めます。
- 依頼者から委任状をもらう
- 必要書類を準備する
- 警察署へ申請する
- 証明書を受け取る
車庫証明業務の手数料は1件あたり1~2万円程度が相場で、手続き期間は約1週間程度です。車の売買が増える3月や9月には特に需要が高まり、集中して業務を行えます。車庫証明業務の魅力は、比較的シンプルな手続きである点と、本業の就業時間外でも対応できる点です。
さらに自動車ディーラーや中古車販売店と提携関係を築くことで、継続的な依頼を受けられます。地域によって申請様式や手続きが異なる場合があります。自分の住んでいる地域の手続きに慣れるところから始めましょう。
補助金申請業務
補助金申請業務は、中小企業や個人事業主がさまざまな補助金を受け取るために必要な業務です。専門的な書類作成が必要なため、行政書士のスキルが生かせます。補助金申請業務の魅力は、クライアントに明確な経済的メリットをもたらせる点です。
適切な申請書類を作成することで、クライアントは数十万円から数百万円の資金援助を受けられる可能性があります。補助金申請業務の業務内容は、以下のとおりです。
- 補助金制度の調査
- 申請要件の確認
- 事業計画書の作成支援
- 必要書類の収集
- 申請後のフォローアップ
補助金申請業務の報酬は成功報酬型が一般的で、獲得した補助金額の10〜20%程度を受け取る場合が多くあります。固定報酬と成功報酬を組み合わせる形式も見られます。補助金申請業務の大きなメリットは、在宅でも対応可能な点です。初期投資も少なく、副業として取り組みやすい業務です。
補助金申請業務を行うために、経済産業省や中小企業庁のウェブサイトなどで最新の補助金情報を常にチェックしましょう。
行政書士の副業に向いている人

行政書士の副業に向いている人について以下の項目別に解説します。
- 自分のペースで仕事を進めたい人
- 法律や書類の作成が得意な人
- 将来的に独立を視野に入れている人
自分のペースで仕事を進めたい人
自分のペースで仕事を進められる人は、行政書士に向いています。本業との両立を図りながら、自分の時間管理で業務に取り組めるためです。行政書士の業務は基本的に納期さえ守れば、作業時間は自由です。夜間や週末の空いた時間を活用して書類作成や調査を行えるので、本業をしながらでも無理なく始められます。
行政書士の業務は書類作成や調査など、一人で完結する業務が多いためマイペースに進めやすい特徴があります。平日の夜に書類作成を行い、週末に顧客対応や官公署への提出を集中させる工夫も可能です。時間管理が得意で、納期を守りながら自分のリズムで作業できる方にとって、行政書士の副業は理想的な選択肢です。
法律や書類の作成が得意な人

行政書士を目指す方にとって、法律や書類作成のスキルは必須です。法律知識と書類作成能力を持っている方は細部への注意力が高く、専門用語の理解度や論理的思考力の面でも行政書士に最適です。法律知識や書類作成能力がある人は、特に契約書や申請書類など間違いが許されない文書の作成において、大きな強みを発揮します。
法的文書の読解や作成に慣れていると、試験で問われる実務的な知識も理解しやすくなります。パソコンの操作に慣れていることも重要です。現代の行政書士業務ではデジタル化が進んでおり、効率的な書類作成能力は仕事の質と量に直結します。
将来的に独立を視野に入れている人
将来的に独立したい人にとって、副業として行政書士を始めることは、リスクを抑えつつ将来の選択肢を広げる有効な手段です。副業として実務に関わることで、自分に行政書士の仕事が合っているかどうかを見極められ、独立の判断材料になります。
行政書士業界の実情や営業面の難しさを事前に体験しておけば、独立後のギャップを減らすことが可能です。人脈づくりや他士業との連携といった「独立後の土台づくり」にも、副業期間を有効活用できます。
副業で行政書士の仕事をするためのステップ

行政書士の副業を始めるためのステップは、以下のとおりです。
- 行政書士試験に合格する
- 行政書士登録をする
- 開業届を提出する
行政書士試験に合格する
行政書士試験に合格するためには、効率的な学習計画と戦略的な勉強法が必要です。サラリーマンの方でも、正しい方法で取り組めば、働きながらでも十分に合格を狙えます。通勤時間や休憩時間、就寝前の時間など、日常の隙間時間を有効活用しましょう。
無理なく続けられるスケジュールを組むことが長期的な学習の鍵です。参考書で全体像を把握したうえで、過去問を最低3年分解きましょう。苦手分野を重点的に対策し、一般知識と法令科目のバランスに注意しながら学習を進めます。時間の制約がある方は、オンライン講座や通信講座、音声教材の利用が効果的です。
学習管理アプリを使って進捗を可視化すると、モチベーション維持にも役立ちます。同じ目標を持つ仲間との情報交換も、孤独な学習を乗り切るための心強い支えになるのでおすすめです。
試験直前には、総復習と弱点克服に集中しましょう。勉強に集中するあまり健康を損なわないよう、体調管理と十分な睡眠を確保してください。継続的な学習と適切な休息のバランスが、最終的な合格への近道となります。
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行政書士登録をする

行政書士試験に合格したら、実際に業務を行うために行政書士としての登録手続きが必要です。行政書士の登録は日本行政書士会連合会に対して行います。登録申請には登録申請書や住民票、身分証明書、登録手数料の納付証明などの書類が求められます。
登録手数料は8万円程度かかりますが、各行政書士会によって金額が異なる場合があります。登録審査に要する期間は1〜2か月程度です。開業予定がある場合は余裕を持って申請しましょう。登録が完了すると行政書士証票(行政書士証)が交付されるため、正式に行政書士として活動できます。
行政書士の登録が完了すると日本行政書士会連合会と都道府県行政書士会の両方に所属することになります。会費は毎年5万円程度です。住所変更などの登録情報に変更があった場合は、変更届を提出しましょう。
副業として行政書士業務を行う場合でも、正規の登録手続きが必須です。登録には実務経験は不要で、試験合格が唯一の要件となります。
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開業届を提出する
行政書士として副業を始める際は税務署への開業届の提出が必要です。開業届の手続きは、業務開始から1か月以内に行います。開業届(正式名称:個人事業の開業・廃業等届出書)の提出方法には、以下の選択肢があります。
- 税務署窓口への直接持参
- 郵送による提出
- e-Taxを利用したオンライン提出
開業届には住所・氏名・職業などの基本情報に加え、屋号を設ける場合はその名称も記入します。青色申告を希望する場合は、開業から2か月以内に青色申告承認申請書も提出が必要です。青色申告は最大65万円の控除が受けられるなど税制上のメリットが大きいためおすすめです。
収入が見込める場合は、消費税課税事業者選択届出書の提出も検討しましょう。自宅と事務所が異なる場合は、事務所の所在地も記載してください。提出の際にはマイナンバーカードまたはマイナンバー通知カード、本人確認書類が必要になります。
サラリーマンとして働きながら副業で行政書士業務を行う場合でも、本業とは別の事業として開業届を提出しなければなりません。開業届を提出したら、控えをもらうか郵送の場合は控えのコピーを保管しておきましょう。開業届は税務上の手続きであり、行政書士としての登録手続きとは異なるので注意してください。
» 必要な費用もわかる!行政書士の独立開業のメリットと開業手順
副業行政書士からステップアップ!

働きながら行政書士を目指すサラリーマンにとって、副業からスタートすることは理想的な選択肢です。副業での行政書士業務は、安定した本業の収入を確保しながら、将来の独立開業への第一歩となります。副業として行政書士を始める最大のメリットは、リスクを最小限に抑えつつ実務経験を積める点です。
相続業務や車庫証明、補助金申請などの業務は、平日夜間や週末に対応できるため、本業で働きながらでも取り組めます。副業として行政書士業務を円滑に進めるためには、会社の副業規定や行政書士の業務範囲、時間管理などに注意しましょう。行政書士試験に合格し、登録と開業届を済ませれば自宅を拠点に副業が始められます。
行政書士の副業は自己管理能力があり、法律や書類作成が得意な方に特におすすめです。本業を続けつつ行政書士としてのスキルを磨くことで、経済的な不安を抱えずに将来のキャリアを広げられます。
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