行政書士として不動産分野で働くには?できる手続きとできない業務をわかりやすく解説

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不動産分野で行政書士としてキャリアを築きたいと考える30代は少なくありません。不動産業界では、さまざまな許認可や法的手続きが必要とされており、代行・サポートする行政書士の需要は高まっています。しかし、実際に不動産業界で行政書士がどのように活躍できるか悩んでいませんか?

この記事では不動産業界における行政書士の業務範囲や、不動産業界で行政書士になるメリットを解説します。記事を読めば不動産分野で活躍する行政書士の働き方が具体的に理解できます。行政書士の不動産に関する業務を理解して、自身の目標を明確に定めましょう。

不動産業界で行政書士になったらできること

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行政書士が不動産業界で行える業務は、以下のとおりです。

  • 不動産取引における契約書の作成
  • 不動産免許申請および更新
  • 開発・建設許可の取得サポート
  • 農地転用手続き
  • 建物の用途変更手続き
  • 民泊やホテルなどの宿泊関連許可申請
  • 車庫証明の取得

不動産取引における契約書の作成

行政書士は売買契約書や賃貸借契約書、重要事項説明書など不動産取引に必要な書類を作成できます。不動産取引における契約書類には法的効力があるため、行政書士は正確に作成する必要があります。

行政書士が行える不動産取引に関わる契約書作成業務は、以下のとおりです。

  • 売買契約書
  • 賃貸借契約書
  • 重要事項説明書
  • 賃貸管理委託契約書
  • 不動産特定共同事業契約書

行政書士は契約書の内容確認や法的要件のチェックを行い、契約の有効性を高めて将来的なトラブルを防ぎます。個別の条件がある場合でも、行政書士は契約書の条項の追加や修正など、取引の実情に合わせて作成・調整できます。契約における権利義務を明確にすることは行政書士の重要な役割です。

行政書士は違約金や契約解除条件といった重要条項を適切に設計することで、取引の安全性を高めます。すでに締結している契約書の法的な見直しや、改善提案も行政書士の業務範囲です。行政書士になれば法改正に対応した契約書への更新が可能になります。

不動産免許申請および更新

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行政書士は不動産業界で事業を始める際に必要な宅地建物取引業(宅建業)免許の申請・更新手続きも行えます。宅建業免許の新規申請では、行政書士が要件の確認や書類作成、内容のチェック、申請提出代行を行います。

宅建業免許の更新は5年ごとに必要で、期限を過ぎると再申請が必要です。行政書士は更新時期の管理から手続き完了まで対応できます。宅建業免許の取得後も、本店移転や役員変更などがあれば変更申請が必要になり、変更手続きを行政書士が対応可能です。

行政書士は不動産免許の廃業時の届出も対応できます。複数の都道府県で事業展開する際は自治体ごとに手続きを行うため、行政書士は地域ごとの細かな違いも把握することが大切です

開発・建設許可の取得サポート

開発や建設を行う際には、行政書士が法律や規制に対応した書類作成や行政との交渉をします。開発・建設許可の取得の際に行政書士が代行できる業務は、以下のとおりです。

  • 都市計画法にもとづく開発許可申請
  • 宅地造成工事規制区域内の許可申請
  • 建築確認申請の前段階手続き
  • 道路使用許可申請
  • 特定建設作業の実施届出
  • 土地区画整理事業関連の申請
  • 市街化調整区域の開発申請許可
  • 景観法に関する届出

行政書士は環境アセスメント関連書類の作成や、近隣住民への説明会資料作成のサポートも行います。行政との折衝・調整業務も行政書士の重要な役割です。

農地転用手続き

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行政書士は農地転用に関する申請書類の作成から許可取得までの全工程をサポートできます。農地転用手続きは、農地を住宅や店舗などの用途に変更する際に必要な法的な手続きです。

農地転用には主に2種類の申請方法があります。自分の農地を転用する場合は農地法第4条の申請、他者への売買や貸借を伴う転用の場合は第5条の申請が必要です。農地の転用目的により許可基準が異なります。

農地は市街化区域内農地や甲種農地、第1〜3種農地に区分されており、区分によって許可の難易度が大きく変わります。第1種農地は優良農地として保護されているため、例外を除き原則として転用は許可されません。

転用の申請先は農地の面積によって異なります。一般的には市町村の農業委員会や都道府県知事に申請を行います。農地が4ヘクタールを超える大規模な転用の場合は、農林水産大臣の許可が必要です。農地が農業振興地域内の農用地(農振農用地)に指定されている場合は、先に農振除外の手続きを行う必要があります。

建物の用途変更手続き

建物の用途変更とは住居から店舗へ、事務所から工場へといった建物の使い方を変えることを指します。建物の用途を変更する際には、適切な手続きが必要です。建物の用途変更には建築基準法にもとづく届出や許可申請が必要になるため、専門知識を持つ行政書士がサポートできます。

建物の用途変更手続きで行政書士ができることは以下のとおりです。

  • 用途変更の届出・許可申請
  • 建物用途の法的区分の変更
  • 用途地域の規制確認
  • 建築確認申請書類の作成
  • 消防設備の変更手続き

建物の用途変更には地域ごとの用途地域の規制があり、変更後の用途が規制に適合するかどうかの確認が必要です。行政書士は建物の用途変更が法的に適合しているか適合性を確認し、必要な手続きを行います。既存不適格建築物(※)の用途変更には特例申請が必要なケースもあるため、行政書士による判断が不可欠です。

※ 既存不適格建築物とは、建築当時は適法だったが、法改正により現在の基準に適合しなくなった建物を指します。

民泊やホテルなどの宿泊関連許可申請

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民泊やホテル事業を始める際に必要な許可申請や届出は行政書士が対応できます。民泊事業を始めるには「住宅宿泊事業法」にもとづく届出が必要です。一方、ホテルや旅館を経営するには「旅館業法」による許可申請が求められます。

行政書士が対応できる宿泊関連の許可申請の手続きは、以下のとおりです。

  • 民泊営業の届出
  • ホテル・旅館の営業許可申請
  • 特区民泊の認定申請
  • 簡易宿所の営業許可申請
  • 消防法関連の手続き
  • 衛生管理関連の申請
  • 用途変更手続き
  • 営業変更・廃業届の申請

宿泊施設の開業には建築基準法や消防法、保健所への申請など多岐にわたる手続きが必要です。手続きには時間と労力がかかるうえ、書類の不備で許可が遅れる恐れもあります。行政書士は必要な書類の作成から申請、行政との交渉まで一貫してサポートできます。

車庫証明の取得

車庫証明(自動車保管場所証明)の取得は、自動車の新規登録や住所変更時に必須の手続きです。車庫証明は警察署で取得可能です。行政書士は車庫証明の申請手続きを依頼者に代わって行えます。車庫証明を申請する際は保管場所が依頼者の自宅から2km以内にあることや、使用権限があることなどを行政書士が確認します。

車庫証明取得の際は警察による現地調査も行われるため、行政書士が申請前に駐車スペースが確保されているか確認してください。マンションや賃貸物件に住んでいる場合は、管理会社などからの証明書が別途必要になることもあります。地域によって車庫証明の申請方法や必要書類が異なるため注意しましょう。

車庫証明の取得手続きは通常1週間程度かかるため、行政書士に依頼されることが多くあります。
» 行政書士の仕事内容とは?業務内容から必要なスキルまで解説

不動産業界で行政書士になってもできないこと

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行政書士が対応できない不動産手続きは、以下のとおりです。

  • 不動産の登記手続き
  • 相続に関する不動産の手続き

不動産の登記手続き

不動産登記に関する手続きは、司法書士や土地家屋調査士の業務範囲です。行政書士は以下の登記手続きを行えません。

  • 不動産の所有権移転登記
  • 抵当権設定登記
  • 抵当権抹消登記
  • 建物表題登記
  • 土地分筆登記
  • 相続による不動産の名義変更登記

不動産登記に関連する以下の業務も行政書士の業務範囲外です。

  • 登記申請書の作成
  • 法務局への提出手続き
  • 登録免許税の計算や納付手続き
  • 登記原因証明情報の作成
  • 不動産の権利関係調査
  • 不動産登記簿の取得手続き

不動産登記に関わる手続きは司法書士や土地家屋調査士の業務範囲です。

相続に関する不動産の手続き

相続が発生した場合の不動産登記申請は、司法書士の独占業務です。相続不動産の登記手続きには、戸籍謄本などの必要書類の収集や相続関係説明図の作成が必要です。相続不動産の登記手続きの準備作業自体は行政書士も手伝えますが、登記申請書類の作成と提出は司法書士のみが行えます。

相続に関連する業務の区分は以下のとおりです。

  • 相続登記申請:司法書士の業務
  • 相続税の申告:税理士の業務
  • 相続不動産の評価:不動産鑑定士の業務
  • 相続放棄手続き:弁護士の業務

不動産関連業務でも相続が関わる場合は行政書士が対応できないため、注意してください。

不動産分野で活躍する行政書士になるメリット

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不動産分野は、行政書士として開業を目指す方にとって大きなチャンスがある分野です。行政書士として不動産分野で働くと、以下のメリットがあります。

  • 手続きの需要が多く仕事が安定する
  • トラブルを防ぎ信頼を得やすい
  • 他士業より行政書士は有利な業務が多い

不動産業界と行政書士は相性が良く、行政書士として長期的な関係を築きやすい点も魅力です。

手続きの需要が多く仕事が安定する

不動産業界は、行政手続きの宝庫とも言える分野です。不動産業界で行政書士が対応できる法的な許認可手続きは以下のとおりです。

  • 宅建業の免許取得や更新
  • 開発行為に関する許可申請
  • 農地の転用許可
  • 民泊営業に関する届出

法的な許認可手続きは法律や各自治体の条例に準拠して行う必要があります。行政書士が持つ、申請書類の正確性や手続きの流れに対する理解が許認可手続きでは不可欠です。不動産会社や建設会社は、事業の立ち上げや拡張のたびに新たな申請業務が発生します。

信頼できる行政書士とは、企業が継続的に関係を築こうとするため仕事の安定につながります。

トラブルを防ぎ信頼を得やすい

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行政書士は不動産業界のトラブルを未然に防止するうえで、重要な役割を果たします。不動産取引は金額が大きく、複数の関係者が関与するケースが多くあるからです。書類のミスや認識のズレが、大きなトラブルにつながるリスクをはらんでいることが不動産取引の特徴です。

契約書の記載ミスや、許可を取得する前に工事を始めるなどのミスが起きると、事業者にとっては損失や信用問題に発展します。依頼者にとっては書類の正確さや行政対応のスムーズさが重要です。書類の作成や役所とのやりとりを、的確に支援できる行政書士は高く評価されます。

他士業より行政書士は有利な業務が多い

不動産に関する行政手続きの中には、行政書士の独占業務や他士業では対応できない業務も多くあります。行政書士のみが対応できる主要な業務は、以下のとおりです。

  • 開発許可申請
  • 農地転用
  • 用途変更
  • 民泊や旅館業の営業許可

行政書士の報酬体系は、他士業と比べて柔軟性があります。初回の費用を抑えたい中小企業や個人事業主にとって、価格のわりに対応が良いと感じてもらいやすい点は行政書士のメリットです。
» 行政書士資格のメリットから試験概要・仕事内容まで幅広く解説
» 行政書士の独占業務を解説!

不動産に強い行政書士になるためのポイント

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不動産分野は、行政書士にとって継続的な需要が見込める安定した業務領域です。競合が多い中で選ばれる行政書士になるために大切なポイントは、以下のとおりです。

  • 得意分野を明確にして専門性を打ち出す
  • 開業当初から実績づくりに注力する
  • 専門用語を使わず説明できる力を身に付ける

法的知識が求められるため、得意分野が明確かどうかが選ばれる行政書士になるための重要な基準になります。

得意分野を明確にして専門性を打ち出す

さまざまな業務の中で自分が特に力を入れたい分野を明確にし、専門性を打ち出すことで依頼者から選ばれやすくなります。行政書士の開業初期は実績が少ないため、1つの分野に絞って知識を深めて実務経験を集中的に積むことが効果的です

専門性を発信する場としてブログやSNS、名刺、事務所のホームページなどを活用し、特化した分野を明確に示しましょう。

開業当初から実績づくりに注力する

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行政書士として不動産業務を安定して受任するには、実績が大きな強みになります。開業したばかりの段階では行政書士の経験が少ないため、依頼者に選んでもらうには積極的な実績づくりが欠かせません。知人や親族からの相談に応じて案件をこなし、行政書士の実務経験を得る機会を積極的に作っていく必要があります。

一つひとつの業務に誠実に取り組むことで、口コミや紹介による依頼の広がりも期待できます。行政書士として許可が取れた手続きの件数や対応地域、案件の内容などを整理し、実績を可視化しておくと効果的です
» 必要な費用もわかる!行政書士の独立開業のメリットと開業手順

専門用語を使わず説明できる力を身に付ける

行政書士としての専門知識を持っていても、依頼者に伝える力がなければ信頼にはつながりません。不動産関連の手続きでは依頼者が制度や法律に詳しくないケースも多いため、わかりやすい説明が重要です。行政書士は専門用語を使うのではなく、誰でもわかる簡単な言葉に言い換えるスキルが求められます。

初回相談の段階で丁寧かつ明確に説明ができる行政書士は、安心して依頼できる印象を与えられます。書類の説明や進捗報告においても、段階ごとに区切って伝えるなどの工夫が行政書士として信頼を築くポイントです。説明力は営業力にも直結するため、常に相手が理解しやすいかどうかを意識して話す習慣をつけましょう。

不動産業界でも行政書士は活躍可能

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行政書士は不動産業界の幅広い分野でサポートが可能です。不動産業界に強い行政書士になるメリットは、面倒な許認可手続きや法的トラブルの回避など、他士業より有利な業務が多い点です。ただし、不動産登記や相続関連手続き、個人間売買手続きなどは行政書士の業務範囲外となるため注意しましょう。

行政書士として選ばれるには得意分野や実績を明確にし、専門用語をかみ砕いて説明できる力が必要です。信頼性と説明力を磨き、顧客が安心して任せられる行政書士を目指しましょう。
» 行政書士の就職先を紹介!

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