行政書士の廃業率は高い?|公的データで分かることと事業を続ける条件

行政書士の廃業率は高い?|公的データで分かることと事業を続ける条件

「行政書士は廃業率が高い」と聞くことがあります。

しかし、廃業について考えるなら、最初に数字の意味を確認した方がよいです。

日本行政書士会連合会は、登録者数、新規登録者数、登録抹消数、その内訳としての「廃業」件数を公表しています。

一方で、そこから「開業した行政書士の○%が○年以内に廃業する」といった廃業率まで直接分かるわけではありません。

公表されている廃業件数と、開業者の生存率・廃業率は分けてください。

そして、これから開業する人にとって重要なのは、「平均的な行政書士が何%廃業するか」より、自分の事務所がどんな条件なら継続できるかです。

行政書士の「廃業率○%」は、そのまま使わない

行政書士の廃業について検索すると、高い割合で廃業するといった数字が紹介されていることがあります。

しかし、その数字を見るときは、少なくとも次を確認する必要があります。

  • 何年のデータなのか
  • 分母は何なのか
  • 「廃業」をどう定義しているのか
  • 新規登録者を追跡した数字なのか
  • 死亡など別の登録抹消理由を含んでいないか

これが分からなければ、「行政書士は○%廃業する」とは判断できません。

数字が具体的だから信頼できる、とは限りません。

日行連が公表しているのは登録者数・登録抹消・廃業件数

日本行政書士会連合会の会報「月刊 日本行政」では、毎月、行政書士会員の異動状況が掲載されています。

例えば2026年6月初日時点では、行政書士の登録者数は55,299人でした。

その直前の2026年5月中には、新規登録578人、登録抹消84人が処理され、登録抹消の内訳は廃業59人、死亡25人、その他0人と公表されています。

つまり、公的資料から「その月に何人が廃業によって登録を抹消したか」は確認できます。

ただし、この59人について、

  • いつ行政書士登録したのか
  • 何年間事業を続けたのか
  • 売上不足が原因だったのか
  • 転職・引退など別の理由だったのか

までは、この数字だけでは分かりません。

したがって、この月次データをそのまま「行政書士の廃業率」に変換することはできません。

登録者数が増えていることも、成功率の高さを意味しない

反対に、「行政書士の登録者数が増えているから、安定した資格だ」と判断するのも早すぎます。

日行連の公表では、行政書士会員数は2026年4月1日時点で54,186人、その後も増加しています。

しかし、登録者数は、個々の行政書士事務所の売上や利益を示す数字ではありません。

登録を維持していても、

  • 行政書士業務を本業にしている人
  • 別の仕事と兼業している人
  • 行政書士法人の社員
  • 他の行政書士・法人に雇用されている人

など、働き方は異なります。

登録者数の増減と、「独立行政書士として食べていける割合」は別の統計です。

では、行政書士が廃業するかどうかは何で見るのか

これから開業する人にとって、全国平均の廃業率より実用的なのは、自分の事業が継続できる条件を見ることです。

行政書士事務所の継続を考えるなら、少なくとも次の5つに分けます。

  1. 資金が持つか
  2. 相談が発生しているか
  3. 相談から受任へ進んでいるか
  4. 1件あたりの収益と必要工数が合っているか
  5. 単発受任の後に次の仕事へ接続できるか

どれか一つが止まっても、事業継続は苦しくなります。

最初に見るのは「あと何か月持つか」

開業後に最も厳しい制約になるのが資金です。

仕事を取る方法を改善するにも、専門業務を覚えるにも時間が必要です。

しかし、資金が先になくなれば、その改善を続けられません。

そこで、

  • 事業の固定費
  • 毎月の生活費
  • 手元資金
  • 毎月の赤字額
  • 現在の資金で維持できる月数

を確認します。

売上目標だけでなく、判断を続けられる残り時間を数字にしてください。

開業後の資金管理については、行政書士開業後に資金が尽きる前に確認することで詳しく整理しています。

仕事がないなら、資格ではなく受任工程を見る

廃業を考えるほど仕事がない場合も、「行政書士には需要がない」とすぐ結論づけないでください。

仕事が成立するまでには、

  • 認知される
  • 相談される
  • 見積へ進む
  • 受任される
  • 再依頼・紹介へつながる

という工程があります。

問い合わせ自体がない事務所と、相談は多いのに受任率が低い事務所では、改善する場所が違います。

「仕事がない」という結果ではなく、どこで仕事が消えているかを確認してください。

受任工程については、行政書士で仕事がないときの工程診断で確認できます。

売上があっても、利益が残らなければ続かない

受任件数が増えれば、それだけで事業が安定するわけでもありません。

例えば、1件の売上があっても、

  • 調査に時間がかかる
  • 遠方への移動が多い
  • 補正対応が多い
  • 外注費や証明書取得費がかかる
  • 依頼者対応に想定以上の時間を使う

のであれば、利益が十分に残らないことがあります。

必要なのは売上だけではなく、

  • 受任額
  • 実際に使った時間
  • 案件に直接かかった費用
  • 修正・追加対応の量

まで記録することです。

「仕事がある」と「続けられる仕事になっている」は別です。

固定費を上げすぎると、必要な売上も上がる

行政書士事務所を続ける条件は、売上だけでは決まりません。

必要な売上は、固定費によって変わります。

例えば、

  • 高い事務所賃料
  • 長期契約の営業支援サービス
  • 複数の有料業務ツール
  • 広告費
  • 外注費

を抱えれば、それだけ毎月必要な粗利益も増えます。

支出自体が悪いわけではありません。

その支出が受任・処理能力・継続率のどこを改善しているのかを見る必要があります。

売上が増えないときに固定費だけ増える状態を避けてください。

一つの業務が終わった後に、次の必要手続があるかを見る

行政書士業務には、単発で完結する仕事も多くあります。

だからといって、毎回ゼロから新規顧客を探すしかないとは限りません。

許認可では、

  • 更新
  • 変更届
  • 追加申請
  • 別の許認可
  • 事業拡大に伴う手続

が発生することがあります。

また、満足した依頼者から紹介が生まれることもあります。

新規受任だけでなく、一件の依頼の後に何が起きるかまで業務設計に含めます。

廃業するかどうかは、資格への愛着で決めない

行政書士試験に合格し、費用を払って登録した後だと、廃業を「今までの努力を無駄にすること」のように感じることがあります。

しかし、事業を続けるかどうかは、その時点の条件で判断するものです。

例えば、

  • 固定費を下げて続ける
  • 別の仕事との兼業へ変える
  • 扱う業務分野を見直す
  • 行政書士業務を休止・廃業する

という選択肢があります。

「ここまで投資したから」という過去の費用ではなく、これから維持する意味があるかで判断してください。

行政書士を廃業する場合は登録抹消の手続をする

行政書士業務を廃止する場合は、登録をそのまま放置するのではなく、登録抹消の届出を行います。

日本行政書士会連合会は、行政書士が業を廃止するときは、所属する行政書士会を経由して届出を行うよう案内しています。

廃業日と届出書の到達時期によっては、翌月分の行政書士会費が発生する場合もあるため、廃業日を決めた段階で所属会へ確認した方が安全です。

廃業を決めた後も、「いつ登録を抹消するか」まで含めて処理してください。

事業を続けられるか確認する5つの数字

行政書士事務所の継続を判断するなら、私は少なくとも次の数字を見ます。

  1. あと何か月資金が持つか
  2. 月に何件の相談が来ているか
  3. 相談から何件受任しているか
  4. 受任1件あたり、いくら利益と時間が残るか
  5. 再依頼・紹介・更新へ何件つながっているか

この数字が分かれば、「行政書士は廃業率が高いらしい」という一般論より、自分の事務所について具体的に判断できます。

まとめ|廃業率を探すより、自分の事務所の継続条件を見る

行政書士の廃業について、公的資料から廃業件数を確認することはできます。

しかし、その数字だけから「行政書士は○%が数年以内に廃業する」といった割合を出すことはできません。

  1. 根拠のない廃業率をそのまま信じない
  2. 資金が何か月持つか確認する
  3. 認知から受任までの工程を記録する
  4. 売上だけでなく利益と工数を見る
  5. 固定費を受任状況に合わせる
  6. 続ける条件と撤退する条件を先に決める

廃業する行政書士が何人いるかは参考情報です。自分が続けられるかどうかを決めるのは、自分の事業で観測できる数字です。

行政書士事業全体の仕事内容と専門分野へ戻る場合は、行政書士の仕事内容と専門分野の決め方を確認してください。

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