行政書士と他士業の独占業務の違いとは?弁護士・司法書士・税理士との比較

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行政書士は魅力的な資格ですが、業務内容や他の士業との違いがわかりにくい資格です。独占業務の範囲や制限について正確な理解がないと、最悪「懲戒処分」ということもありえます。この記事では、行政書士の独占業務について詳しく解説します。

記事を読めば、行政書士の業務範囲や他士業との違いが明確になり、資格取得後のキャリアプランを立てることが可能です。行政書士の独占業務は、許認可申請の手続きや各種証明書の取得支援など、官公署に提出する書類の作成です。裁判手続きや登記、税務申告などは行えないものもあるので注意しましょう。

行政書士の独占業務

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行政書士の独占業務は、以下の3つがあります。

  • 官公署に提出する書類の作成
  • 権利義務に関する書類の作成
  • 事実証明に関する書類の作成

専門知識と経験が必要なため、行政書士にのみ認められています。
» 行政書士の仕事内容とは?業務内容から必要なスキルまで解説

官公署に提出する書類の作成

官公署に提出する書類の作成は、行政書士の重要な独占業務の一つです。いわゆる「許認可申請」と呼ばれるもので、行政書士の華型業務でもあります。申請手続きを行うために、住民票や戸籍謄本、印鑑証明書の取得ができるため八士業の1つとされています。行政書士は、複雑な手続きや専門知識を要する書類作成をサポートしています。

特定の業種や事業に関連する申請書類も、行政書士の業務の一つです。官公署に提出する書類作成には、関連法規や手続きに関する深い知識が必要になります。行政書士は依頼者の状況を理解して適切な書類を作成し、円滑な申請手続きをサポートすることが可能です。

権利義務に関する書類の作成

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権利義務に関する書類の作成は、行政書士の重要な業務の一つです。契約書や遺言書、示談書、内容証明郵便、各種規約・定款、委任状、念書・誓約書、協定書、確認書などの書類作成が含まれます。覚書や和解契約書、賃貸借契約書、売買契約書、贈与契約書、離婚協議書なども、権利義務に関する書類です。

個人や法人の権利や義務に関わる重要な文書であり、正確かつ適切な内容で作成する必要があります。依頼者の利益を守り、トラブルを未然に防ぐうえで大切な業務なので、行政書士の専門知識が求められます。行政書士は法律の専門家として、依頼者の意向を正確に反映しつつ、法的に有効な書類の作成が必要です。

権利義務に関する書類の作成で多いのが、行政書士の懲戒処分です。行政書士ができるのは「書類作成の代行」までです。依頼者に代わって、契約内容の示談や交渉をしてしまうと、弁護士法第72条の非弁行為に該当します。事実、毎月のように懲戒処分者が出ているため、業務の線引きが重要です。

事実証明に関する書類の作成

事実証明に関する書類の作成は、行政書士の重要な業務の一つです。住民票や戸籍謄本、印鑑証明書の取得代行、各種事実証明書などの証明書の作成が含まれます。個人や法人の身分や状況を証明するために、欠かせない書類です。行政書士は、依頼者に代わって適切に作成し、官公署への提出をサポートしてくれます。

事実証明に関する書類の作成には、正確性と法的知識が必要です。行政書士は関連法規や手続きに精通しているので、ミスのない書類作成ができます。複雑な手続きや専門知識が必要な書類作成を行政書士に任せれば、時間と労力を節約できます。

行政書士として行う独占業務の具体例

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行政書士の独占業務の具体例は、以下のとおりです。

  • 許認可申請手続き
  • 契約書や合意書の作成
  • 各種証明書の取得支援

独占業務を通じて、人々の生活や事業を支援します。

許認可申請手続き

許認可申請手続きは、行政書士の主要業務の一つです。多くの事業者にとって、複雑な申請手続きは大きな負担となります。行政書士は申請手続きの負担を軽減してくれるので、スムーズな申請を行うことが可能です。

建設業許可申請や産業廃棄物収集運搬業許可申請、古物商許可申請、運送業許可申請などの許認可申請の手続きを行います。申請手続きは、法令や規制が複雑で、一般の方にはわかりにくい部分が多くあります。行政書士は専門知識を活かして、必要書類の作成や提出、行政機関とのやり取りを代行することが可能です。

申請後のフォローアップも行ってくれるので、許可取得後の手続きや更新にも対応できます。

契約書や合意書の作成

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契約書や合意書の作成は、行政書士の重要な独占業務の一つです。賃貸借契約書や売買契約書、業務委託契約書、雇用契約書、秘密保持契約書(NDA)などの契約書や合意書の作成が含まれます。文書を作成するときは、法的な知識と経験が必要です。行政書士は、契約書の内容確認や文言の調整、修正も行います。

契約条項の解釈や説明、法的チェックも重要な役割です。契約書の英語翻訳支援やテンプレート作成、契約書作成に関する相談対応なども行政書士の業務に含まれます。

各種証明書の取得支援

各種証明書の取得支援は、行政書士の重要な独占業務の一つです。行政書士が取得を支援してくれる証明書には、出生証明書や婚姻証明書、在留資格証明書、各種身分証明書などがあります。戸籍謄本・抄本や住民票、印鑑証明書、各種税証明書、各種営業許可証、各種資格証明書の取得も可能です。

複雑で時間がかかる証明書の取得手続きですが、行政書士なら手続きをスムーズに進められます。行政書士による証明書取得支援のメリットは、時間と労力の節約だけではありません。正確な申請書類の作成や、適切な申請先の選択など、手続きの確実性も高まります。証明書を確実に取得でき、余計な手間や費用を避けられます。

行政書士と他士業の独占業務の違い

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行政書士と他士業の独占業務の違いを理解するためには、以下の他の士業ごとの独占業務を知っておくことが重要です。

  • 弁護士の独占業務
  • 司法書士の独占業務
  • 税理士の独占業務

行政書士は他の士業と重複しない範囲で、広くさまざまな分野での書類作成や手続き支援を行います。

弁護士の独占業務

弁護士と行政書士の大きな違いは、依頼者に代わって交渉ができるかどうかです。行政書士は書類作成に留める必要がありますが、弁護士は交渉や裁判での代理権を行使できます。

弁護士の独占業務は、法律に関する専門的な知識と技能を必要とする業務です。裁判所での訴訟代理や法律相談、法律文書の作成、裁判外紛争解決手続の代理、刑事事件の弁護などの業務が含まれます。弁護士の独占業務は、法律の専門家として依頼人の権利を守り、公正な社会の実現に貢献しています。

弁護士の重要な独占業務の一つが『訴訟代理』です。依頼人の代わりに裁判所で主張し、証拠を提出します。法律の専門知識が必要なため、弁護士以外の人は行えません。個人や企業が抱える法的な問題について、専門的なアドバイスを提供する法律相談も、弁護士の重要な業務の一つです。

相談者の状況を正確に把握し、最適な解決方法を提案するには、豊富な法律知識と経験が求められます。

司法書士の独占業務

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行政書士と司法書士の大きな違いは、登記ができるかどうかです。行政書士も登記手続きまでの重要書類作成は代行できますが、最後の法務局へ登記申請手続きをできるのは司法書士の業務です。

司法書士が可能な独占業務は、不動産登記や商業・法人登記の手続きなどです。不動産登記手続きや商業・法人登記手続き、裁判所提出書類作成、簡易裁判所訴訟代理、法務局提出書類作成などが含まれます。一般の人や他の資格保有者にはできない業務です。

他にも供託手続きや成年後見登記手続き、債務整理(任意整理)の代理、140万円以下の民事事件の代理などが含まれます。司法書士を目指す方は、業務内容をしっかりと理解しておきましょう。

税理士の独占業務

行政書士と税理士の大きな違いは確定申告ができるかどうかです。行政書士も会計上必要な基礎資料(会計帳簿等)を作成できますが、税務手続きを代理できるのは税理士の分野になります。

税理士の独占業務は、税務に関する専門的な知識と経験を必要とする重要な役割です。税務代理や税務書類の作成、税務相談の3つの業務が、税理士の独占業務として定められています。独占業務は、税理士法によって定められており、税理士資格を持たない人はできません。

税務代理には、確定申告書の作成や税務調査の立会い、税務署との交渉などが含まれます。税務書類の作成では、法人税・所得税・相続税などの申告書を作成します。税務相談では、税務会計に関する助言や税務計画の立案、税務に関する不服申立てなどを行うのが一般的です。

独占業務を通じて、税理士は個人や企業の適切な納税を支援し、税務に関する問題解決をサポートしています。税理士の専門知識は、複雑な税務の世界を理解し、適切に対応するために欠かせません。

行政書士が行えない業務

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行政書士には法律で定められた独占業務がありますが、以下の3つの業務は行えません。

  • 裁判手続きに関する業務
  • 登記に関する業務
  • 税務申告に関する業務

行政書士は業務範囲を理解し、適切な専門家と連携することが重要です。

裁判手続きに関する業務

裁判手続きに関する業務は弁護士の独占業務なので、行政書士は行えません。訴状などの裁判関係書類の作成や法廷での弁論や証人尋問、裁判所への書類提出や手続き代行などは、行政書士の業務範囲外です。調停や和解の代理人としての活動や、裁判外紛争解決手続きの代理、刑事事件の弁護活動も行政書士にはできません。

裁判所での口頭弁論や控訴・上告などの不服申立手続き、執行手続きの代理などもできないので注意が必要です。破産や民事再生などの法的整理手続きについても、行政書士の業務範囲外です。行政書士は官公署に提出する書類の作成など、行政手続きに関する業務が中心となります。

裁判手続きは弁護士に依頼する必要があります。

登記に関する業務

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登記に関する業務は、司法書士の独占業務に該当するため、行政書士では行えません。不動産登記や商業登記、法人登記、成年後見登記、供託に関する登記などの登記業務は、行政書士の業務範囲外です。不動産登記には所有権移転登記や抵当権設定登記などが含まれ、商業登記には会社設立登記や役員変更登記などが含まれます。

法人登記には、NPO法人や一般社団法人の登記などが該当します。登記簿謄本や登記事項証明書の取得代行は可能です。登記に関する業務を行うには、司法書士の資格が必要となります。行政書士が誤って登記業務を行うと、法律違反となるので注意が必要です。

税務申告に関する業務

税務申告に関する業務は、税理士の独占業務なので、行政書士は行えません。確定申告書の作成や税務相談、税務代理、税務書類の作成、税務調査への立ち会いなどは、行政書士の業務範囲外です。税務申告は専門的な知識と経験が必要なので、税理士に依頼するのが一般的です。

行政書士も税務に関する基礎知識を持っているため、クライアントの質問に答えたり税理士を紹介したりできます。相続税や贈与税の申告、法人税や消費税の申告なども行政書士の業務範囲外です。

行政書士の独占業務に違反したときの罰則

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行政書士の独占業務違反については、以下の2つに分類されます。

  • 行政書士の独占業務を無資格者が行った場合
  • 行政書士が他士業の独占業務を行った場合

違反すると懲役や罰金、懲戒処分などの罰則が課されるので注意しましょう。

行政書士の独占業務を無資格者が行った場合

行政書士の独占業務を無資格者が行うと、行政書士法第19条の2に違反します。罰則として1年以下の懲役または、100万円以下の罰金が課せられます。無資格者による違法行為は、行政書士の信用を大きく傷つける行為です。

行政書士会が告発する可能性があり、違反行為を行った個人や団体に対しては、業務停止命令が出されることもあります。無資格で行政書士業務を行った場合、依頼者から損害賠償を請求されるリスクがあります。行政機関からは違法行為の是正命令や、再発防止のための指導が行われるのも一般的です。

違反行為が公表されることで、社会的信用を失います。関連する業務が取り消されるケースもあるため、重大な結果を招くと認識しておきましょう。

行政書士が他士業の独占業務を行った場合

行政書士が他士業の独占業務を行うことは、法律違反となります。行政書士法第19条の2にもとづく罰則の対象となり、少なくとも1年以下の懲役または100万円以下の罰金が科されます。どの他士業の独占業務を行ったかによって懲役年数や罰金は変わります。行政書士の資格取り消しや、懲戒処分の対象となるため注意が必要です。懲戒処分には戒告や2年以内の業務停止、退会処分などが含まれます。

他士業団体からの損害賠償請求や信用失墜による顧客離れ、再度の資格取得が困難といったリスクがあります。リスクを避けるためには、他士業との連携や紹介で対応することが大切です。行政書士として自身の業務範囲を正しく理解し、遵守することが重要になります。

行政書士になる方法

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行政書士になる方法は、主に以下の2つがあります。

  • 行政書士試験に合格する
  • 公務員の特認制度を利用する

どちらの方法でも、最終的に行政書士としての登録手続きが必要です。
» 行政書士になるための3つのルートを詳しく解説!

行政書士試験に合格する

行政書士試験に合格するためには、計画的な学習と効果的な対策が不可欠です。まずは試験の概要と科目を、十分に理解することから始めましょう。具体的な合格への道のりは、以下のとおりです。

  • 学習計画を立てる
  • 基礎知識を身に付ける
  • 過去問を繰り返し解く
  • 弱点分野を集中的に学習する
  • 模擬試験を受験する

試験では限られた時間内に多くの問題を解く必要があるので、効率的に解答する力を身に付けることが大切です。暗記すべき重要事項をまとめ、直前期には効果的な復習方法を実践してください。メンタル面の準備も忘れずに行い、試験当日の注意事項もしっかり確認しましょう。合格後の手続きについても、把握しておきましょう。
» 行政書士試験の概要から勉強法、キャリアパスまで徹底解説

公務員の特認制度を利用する

公務員の特認制度は、長年の公務員経験を持つ方に、行政書士資格を付与する制度です。以下の条件を満たすことで、行政書士試験を受けずに資格を取得できます。基本的には行政事務での勤務歴を見られます。

  • 国家公務員または地方公務員として20年以上勤務
  • 行政に関する相当の知識と経験
  • 都道府県知事の認定

申請には、勤務証明書や職務経歴書などの書類が必要です。認定後は、登録手続きを行えば開業できます。特認制度で取得した資格は、一般の試験合格者と同等です。長年の行政実務経験を活かせるので、即戦力として活躍できます。
» 公務員が最短距離で行政書士になるための方法を解説!

行政書士と他士業の独占業務を押さえる

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行政書士は官公署提出書類、権利義務書類、事実証明書類の作成を主な業務としますが、他士業の独占業務は行えません。行政書士になるには試験合格か、公務員特認制度の利用が必要となります。独占業務違反には、罰則があるため注意が必要です。行政書士を目指す方は、よく理解したうえで勉強を進めましょう。

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