行政書士と社労士の違いとは？業務内容・年収・試験内容を徹底比較！

• 行政書士と社労士の違いがわからない
• 行政書士と社労士のどちらの資格が自分に向いているのか知りたい
• ダブルライセンスにメリットはあるの？

行政書士と社労士の違いを理解しないと、自分の能力を最大限に発揮できない可能性があります。この記事では、行政書士と社労士の業務内容や働き方、年収、試験の違いを比較し、ダブルライセンスのメリットも解説します。記事を読めば、自分に最適な資格やキャリアプランを立てることが可能です。

行政書士と社労士は専門分野が異なりますが、相互補完性が高い資格です。行政書士と社労士のダブルライセンスは、業務拡大や顧客獲得に役立ちます。

行政書士と社労士の業務の違い

行政書士と社労士は、ともに法律の専門家ですが、扱う法律範囲や専門手続きが異なります。行政書士と社労士の業務について、以下の2つの視点から解説します。

• 行政書士の通常業務と独占業務
• 社労士の通常業務と独占業務

行政書士の通常業務と独占業務

行政書士は、役所への手続きや大切な書類作りなど、専門知識が求められる職業です。顧客にアドバイスを行うことも行政書士の業務の一部です。以下の仕事は、行政書士の独占業務に該当します。

• 新しい事業の営業許可を得るための申請書の作成
• 企業や組織を設立する際の書類準備や手続きのサポート
• 外国籍の人の手続き(ビザの取得や更新・永住許可・日本国籍取得など)のサポート

遺言や相続サポート、契約書作成、中小企業・個人事業主支援は通常業務です。行政書士は、お金の貸し借りや不動産の売買・賃貸、業務委託などの契約書の作成や相談に応じます。内容証明郵便の作成も行います。事業計画の作成支援や資金調達のアドバイスなど、経営に関するコンサルティングも行政書士の仕事です。

企業の議事録や事業の会計帳簿などの事実証明書類の作成も行います。行政書士は、幅広い業務を通じて日常生活やビジネスを円滑に進める支援をしています。
» 行政書士になるための3つのルートを詳しく解説！
» 行政書士の独占業務を解説！

社労士の通常業務と独占業務

社労士の仕事は、企業の人事や労務に関する専門的なサポートをすることです。社労士が労働法や社会保険に関する法律上の手続きを担うことで、企業は法令を守り、安心して事業に集中できます。社労士の独占業務は以下のとおりです。

• 労働保険や社会保険に関するさまざまな書類の作成・代行
• 法定帳簿(労働者名簿や賃金台帳など)の作成
• 企業と従業員の間で起きたトラブルを解決する際の交渉

トラブルの際に代理人として交渉する「特定社労士」としての業務は、特別な研修を受けた社労士のみが行えます。社労士の通常業務は、人事労務コンサルや助成金サポート、給与計算などです。社員がより働きやすい環境を作るために、就業規則の作成や見直し、給与制度・人事評価制度の設計などを行います。

職場環境の整備に関する指導やアドバイス、人事労務に関するセミナーや研修の開催なども社労士の仕事です。

行政書士と社労士の働き方の違い

行政書士と社労士は、業務範囲や社会的役割の違いから働き方も異なります。行政書士と社労士の働き方をそれぞれ解説します。

• 行政書士の働き方
• 社労士の働き方

行政書士の働き方

行政書士は多くの場合、自分で事務所を開いて仕事を行います。働く時間や場所、仕事の進め方をある程度自分で決められます。企業内行政書士は、企業の社員として専門知識を活用できる働き方の一つです。別の仕事を続けながら、週末や平日の夜間を中心に副業として働くことも可能です。

建設業の許可申請や相続手続きなど、特定の専門分野に特化して業務を行う働き方もあります。独立を目指して、行政書士事務所のアシスタントとして実務経験を積む人も多くいます。
» 行政書士は副業でもできる！メリットや始め方を詳しく解説

社労士の働き方

社労士は多様な働き方が選べる仕事です。一般企業の人事や労務部門、社労士法人、コンサルティングファームなどで活躍できます。一般企業では、社員の入社から退職までの手続きや、働きやすい環境づくりのサポートが可能です。

独立開業も一つの選択肢です。顧客となる企業と顧問契約を結び、継続的にサポートすることが仕事です。

労働保険の年度更新や社会保険の算定基礎届などの手続きが集中する時期には、仕事が忙しくなります。勤めている企業のルールで許可されていれば、副業で社労士の資格を生かして働くことも可能です。

行政書士と社労士の年収の違い

行政書士と社労士は、資格の専門性や顧客からの仕事の受け方が異なるため収入に差が生じます。行政書士と社労士の年収について、それぞれ解説します。

• 行政書士の年収
• 社労士の年収

行政書士の年収

行政書士の年収は、働き方や個人の能力によって大きく変わります。開業するか、どこかの事務所に勤めるかによっても収入が異なります。行政書士の平均年収は500～600万円です。行政書士として開業した場合、年収は300万円未満～1,000万円超まで幅があります。

顧客を見つけるための営業力や、自分や事務所をアピールする経営手腕も、年収を左右するポイントです。行政書士法人や事務所に勤務すれば、比較的安定した給料が得られます。しかし、独立開業ほどの高収入を得ることは難しい傾向にあります。
» 行政書士の平均年収を年代別・タイプ別に解説！

社労士の年収

社労士の年収は500～700万円が目安です。企業に勤める「勤務社労士」と、自分で事務所を開く「開業社労士」とでは、収入を得る仕組みが大きく異なります。勤務社労士の場合、給与は勤めている企業の規模や個人の経験、役職などによって左右されます。勤務社労士の年収の目安は400～800万円です。

開業社労士の収入は、自分の営業力や専門分野の確立度合いが影響します。成功すれば年収1000万円以上を目指すことも可能です。開業直後は300万円未満となる場合もあります。社労士は経験年数を重ね、専門性を高め、積極的に顧客を開拓していくことで、より高い年収を目指せる職業です。

行政書士と社労士の試験の違い

行政書士試験と社労士は業務内容が違うため、求められる知識や能力が異なります。行政書士と社労士の試験内容について、それぞれ解説します。

• 行政書士の試験内容
• 社労士の試験内容

行政書士の試験内容

行政書士の試験は、「法令等科目」と「一般知識等科目」が出題されます。法令等科目では、憲法や行政法、民法などの知識が問われます。一般知識等科目で問われるのは、政治や経済、社会、個人情報保護などです。問題の多くは選択方式で、記述式の問題も出題されます。

行政書士の試験に合格するには、以下の3つの条件をすべて満たさなければなりません。

• 法令等科目：122点以上
• 一般知識等科目：24点以上
• 試験全体の合計点：300満点中180点以上

行政書士の試験は、毎年11月の第2日曜日に実施されます。試験時間は午後1時から午後4時までの3時間です。

社労士の試験内容

社労士の試験は、マークシート方式で「選択式」と「択一式」の2つに分かれており、幅広い分野から出題されます。「選択式試験」と「択一式試験」の2つの形式で構成されています。出題科目は労働基準法や労災保険法、雇用保険法、健康保険法などです。

社労士試験は、以下のいずれか1つを満たしていなければ受験できません。

• 大学・短大・専門職大学・専門職短期大学・5年制の高等専門学校を卒業している
• 労働社会保険諸法令に関する業務に3年以上従事している
• 特定の国家試験(行政書士試験または税理士試験など)に合格している

合格基準は選択式試験で44点以上、択一式試験で25点以上です。選択式試験は、各科目で4点以上を取らなければなりません。1つの科目でも4点を下回ってしまうと、全体の点数が良くても不合格となります。試験時間は選択式試験が80分、択一式試験が210分です。社労士試験は毎年8月の第4日曜日に実施されます。

行政書士と社労士に向いている人の違い

行政書士と社労士は、異なるタイプの人材が活躍しやすい資格です。業務内容や必要な能力に違いがあるためです。行政書士と社労士に向いている人について、それぞれ解説します。

• 行政書士に向いている人
• 社労士に向いている人

行政書士に向いている人

行政書士に向いている人の特徴は以下のとおりです。

• 独立して自分の力で仕事をしたい人
• 細かい事務作業をコツコツと進めることが得意な人
• 相手の言いたいことをしっかり聞ける力がある人
• 新しいことを勉強し続けられる人
• 正確に仕事を進められる人
• 任された仕事を最後までやり遂げられる人
• 人の役に立つことに喜びを感じる人

行政書士の仕事は、顧客の代わりに書類を作ったり、役所で手続きをしたりすることが中心です。計画を立てて物事を進めるのが得意な人は、行政書士として力を発揮できます。
» 行政書士に向いている人・向いていない人の特徴

社労士に向いている人

社労士に向いている人の特徴は以下のとおりです。

• 法律や規則に関心がある人
• 数字に強い人
• 粘り強く勉強ができる人
• コミュニケーション能力が高い人
• 公平性を保てる人
• 正義感がある人

社労士は人と企業の成長をサポートする仕事です。企業の「人」に関する専門家として、法律や制度の知識を駆使し、経営者と従業員の助けとなる役割を担える人に適しています。

行政書士と社労士のダブルライセンスを取得するメリット

行政書士と社労士のダブルライセンスを取得するメリットは、以下のとおりです。

• 業務を相互補完できる
• セールスポイントが増える
• 仕事の選択肢が増える
• 顧客層が拡大する

業務を相互補完できる

行政書士と社労士のダブルライセンスを取得すると、顧客に提供できるサービスの幅が広がります。行政書士と社労士は異なる専門分野を持っているためです。企業を作る手続きと、企業で働く従業員の社会保険の手続きや働く環境の管理を、一貫して行えます。

企業からの相談を受けながら、企業の拡大に必要な許可申請も同時にできます。外国人を雇う際に必要なビザの申請や契約、社会保険の手続きも一度にまとめてサポート可能です。

セールスポイントが増える

行政書士と社労士のダブルライセンスを取得すると、顧客に対して大きなアピールポイントになります。幅広い相談に1人で対応できるため、顧客は複数の専門家を探す手間が省けます。起業したい顧客がいた場合、企業設立から企業のルール作りまで、一貫してサポートが可能です。

ダブルライセンスを取得すれば、さまざまな問題や手続きをまとめて解決でき、同業者との違いを明確に打ち出せます。顧客からの信頼も厚くなり、仕事を任せてもらいやすくなります。

仕事の選択肢が増える

行政書士と社労士のダブルライセンスを取得すると、選べる仕事の幅が大きく広がります。それぞれの専門知識を生かせる場面が増え、より多くの人や企業の役に立てるためです。以下の働き方があります。

• 独立開業
• 企業内勤務
• 既存事務所勤務
• コンサルティング・講師業
• 専門特化

独立開業する場合、顧客に提供できるサービスの種類が増え、さまざまな要望に応えられます。企業の中で働く場合、法律や人事といった専門知識を生かせる部署で活躍することが可能です。行政書士事務所や社労士事務所で働く場合も、より有利な条件で仕事を選べます。

専門的な知識を生かして、企業にアドバイスをしたり、セミナーで人に教えたりするなど、多様な働き方の実現が可能です。特定の業種に詳しい専門家として自分だけの強みを持てることが、ダブルライセンスのメリットです。

顧客層が拡大する

行政書士と社労士のダブルライセンスを取得すると、顧客層が拡大します。それぞれの資格だけではアプローチできなかった、より多くの顧客にサービスを提供できるためです。ダブルライセンスによって、新たな顧客層の開拓が可能になります。

得意先からの紹介や、新しい業務の依頼が増える可能性もあります。行政書士と社労士のダブルライセンスは一つの窓口で幅広いサービスを提供できるため、顧客の満足度を高めることが可能です。顧客と長期的な信頼関係を築きやすくなります。

ダブルライセンスも選択肢の一つ

行政書士と社労士は業務内容や年収、試験内容が大きく異なります。行政書士は「許認可」に関する書類作成や手続き代行を扱います。社労士は「人事・労務管理」の専門家として企業をサポートすることが仕事です。行政書士と社労士は得意とする分野が異なります。

行政書士は独立開業や行政書士事務所のアシスタントとして活躍できます。社労士が活躍できる場所は、企業の労務部門やコンサルティングファームなどです。行政書士と社労士のダブルライセンスを取得することで、企業の設立準備から従業員の人事や労務の管理まで、一貫してサポートできます。