行政書士として開業するとき、登録費用や事務所の準備費用は比較的見えやすいです。
一方で、見落としやすいのが、仕事が安定して入るまでの時間をどう生き延びるかです。
私自身、2018年に行政書士事務所を開業しました。
しかし、開業から半年ほどたった頃には運転資金がかなり減り、事務所を続けること自体を現実的に考え直すところまでいきました。
登録できたことと、仕事が継続的に入ることは別でした。
行政書士開業では、「いくらで開業できるか」だけでなく、「売上がなくても何か月持つか」まで設計しておく必要があります。
行政書士開業で怖いのは、初期費用だけではない
開業準備では、最初に必要な金額へ意識が向きやすくなります。
- 行政書士登録
- 行政書士会への入会
- 事務所
- パソコンやプリンター
- 名刺
- ホームページ
もちろん、これらの費用も必要です。
ただし、もっと重要なのは開業した後です。
売上が十分にない状態でも、支出は続きます。
- 行政書士会費
- 事務所費
- 通信費
- 業務サービスの利用料
- 交通費
- 営業・広報費
- 自分自身の生活費
開業資金は、開業日までに使うお金ではなく、売上が立つまで事業と生活を維持するお金として考えてください。
私は開業半年ほどで、資金が尽きる現実を見た
私が行政書士事務所を開いたのは2018年です。
開業時には、当然ですが「これから仕事を取っていく」つもりでした。
しかし、仕事は自動的には増えません。
登録したことも、行政書士という肩書きができたことも、そのまま売上には変わりませんでした。
半年ほどたった頃には、事業に使える資金がかなり減っていました。
その段階になると、問題は「もっと頑張って営業するか」だけではありません。
このまま続けてよいのか。
生活をどう守るのか。
撤退するなら、いつ判断するのか。
そこまで考える必要が出てきます。
開業で本当に苦しくなるのは、「仕事がない」という事実そのものより、仕事が増えるまで待てる時間がなくなることです。
「売上ゼロでも何か月持つか」を先に出す
開業前に確認したいのは、月商目標より先に、売上がほとんどない状態で何か月維持できるかです。
まず、毎月必ず出ていくお金を分けます。
事業の固定費
- 事務所賃料
- 行政書士会費
- 通信費
- 各種業務サービス
- Webサイトの維持費
- その他、契約している固定サービス
生活の固定費
- 家賃・住宅費
- 食費
- 光熱費
- 保険
- 通信費
- 借入返済
- その他、毎月必要な生活費
これを合計して、手元資金で何か月維持できるか確認します。
この期間が、開業後に試行錯誤できる時間です。
売上予測より、資金が減る速度を観測する
開業前に「月○万円売り上げる」と目標を立てること自体は構いません。
しかし、開業直後の売上は自分で完全には制御できません。
だから、実際に観測しやすい数字を見ます。
- 今月いくら使ったか
- 固定費はいくらか
- 問い合わせは何件あったか
- 相談から受任へ何件進んだか
- 1件受任するまでどれだけ時間がかかったか
- 現在の資金であと何か月持つか
例えば問い合わせが増えているなら、売上がまだ小さくても次の受任へつながる可能性があります。
逆に、資金だけが減り続け、問い合わせや紹介の入口も増えていないなら、何かを変える必要があります。
「そのうち仕事が来る」と期待するのではなく、資金と受任導線を同時に観測します。
固定費は、売上がない月にも払えるかで決める
開業時には、立派な事務所や有料サービスを揃えたくなることがあります。
しかし、固定費は一度増やすと、仕事がない月にも支払いが続きます。
そのため、支出を決めるときは、
- この支出は最初の受任に必要か
- 売上がゼロでも半年払えるか
- もっと小さく試せないか
- 契約期間はどのくらいか
- 止めたいときに止められるか
を確認します。
自宅事務所を使えるなら、固定費を抑える方法の一つになります。
ただし、自宅事務所には登録条件や生活空間との分離など別の条件があります。
事務所選びについては、行政書士は自宅で開業できる?事務所要件・賃貸・固定費を確認するで整理しています。
開業直後に高額な契約を増やさない
仕事が取れないと、不安を解消するために何かを買いたくなることがあります。
- 高額な実務講座
- 営業コンサル
- Web制作
- 広告
- 紹介サービス
- 各種業務ツール
必要なものもあります。
ただし、不安そのものを購入理由にすると、資金がさらに減ります。
「仕事がないから何か買う」のではなく、受任工程のどこが止まっていて、その支出が何を改善するのかを確認してください。
開業直後の契約や支出については、行政書士の開業手順でも確認できます。
生活費まで事業へ投入し始めたら、判断を分ける
事業資金が減ると、生活用のお金から補填したくなることがあります。
しかし、ここは一度立ち止まって判断した方がよい地点です。
確認するのは、
- 現在の受任件数
- 問い合わせの増減
- 今後の具体的な案件見込み
- 毎月の赤字額
- 残っている生活防衛資金
です。
受任導線が育っている途中なのか。
それとも、事業モデルそのものを見直す必要があるのか。
ここを分けます。
生活を壊してまで「行政書士として開業を続けること」自体を目的にしないでください。
副収入や別の仕事を持つことも、生活防衛の一つ
開業したからといって、行政書士収入だけで生活しなければならないわけではありません。
事業が安定するまで、別の収入源を持つ方法もあります。
大切なのは、
- 行政書士業務へ使える時間
- 生活費を守る収入
- 開業を維持する固定費
のバランスです。
別収入を持つことで受任活動が完全に止まるなら問題ですが、生活費を守ることで無理な案件や高額な契約を断れるようになる場合もあります。
「専業でなければ本気ではない」と考える必要はありません。
撤退基準は、資金が尽きる前に決めておく
開業時には成功した後のことは考えても、撤退条件までは決めないことがあります。
しかし、資金がほとんどなくなってから判断すると、選択肢も少なくなります。
例えば、
- 生活防衛資金を○か月分以下にはしない
- 一定期間問い合わせが増えなければ業務分野を見直す
- 固定費が一定額を超えたら削減する
- 事業資金が一定水準を下回ったら別収入を増やす
- 継続が生活を壊す状態なら休止・撤退も検討する
といった条件を、自分で決めておきます。
具体的な金額は、人によって違います。
重要なのは、資金がなくなるまで何となく続ける状態を避けることです。
廃業を考えることと、失敗したことは同じではない
開業後に資金が厳しくなると、「ここでやめたら全部失敗だった」と考えやすくなります。
しかし、事業を続けるかどうかは、その時点の条件から判断するものです。
行政書士登録を維持する。
副業へ切り替える。
別の仕事を主にする。
一度廃業する。
複数の選択肢があります。
「開業した以上、続けなければならない」という過去の判断に、現在の生活まで拘束させないでください。
開業前に作っておきたい資金管理の最低ライン
これから行政書士として開業するなら、少なくとも次の数字は出しておくことをおすすめします。
- 登録・開業までに必要な一時費用
- 毎月発生する事業固定費
- 毎月必要な生活費
- 現在の手元資金
- 売上ゼロでも維持できる月数
- 資金が減ったときに削減する支出
- 別収入を増やす、休止するなどの判断条件
ここまで出して初めて、「今開業できるか」を判断できます。
登録に必要な金額は、行政書士の登録費用と継続費用で確認してください。
まとめ|開業資金は「始める金」ではなく「判断できる時間」を買うお金
行政書士として開業するとき、登録費用と設備費だけを準備しても十分ではありません。
仕事が安定するまでの期間を耐えられる資金が必要です。
- 売上ゼロでも維持できる月数を出す
- 事業固定費と生活費を分ける
- 問い合わせ・受任・資金残高を観測する
- 不安を理由に固定費を増やさない
- 生活防衛資金を守る
- 資金が尽きる前に変更・休止・撤退を判断する
私自身、開業から半年ほどで資金が減り、廃業を現実的に考えるところまでいきました。
だからこそ、開業資金は単に「事務所を開くためのお金」ではないと考えています。
資金は、仕事が成立するかを観測しながら、焦らず次の判断をするための時間を確保するものです。
登録・事務所・最初の受任まで含めて開業全体を整理する場合は、行政書士の開業手順へ戻ってください。