行政書士は不動産で何ができる?|農地・許認可・契約と他士業との境界

行政書士は不動産で何ができる?|農地・許認可・契約と他士業との境界

行政書士は、不動産そのものを売買したり登記したりする専門家ではありません。

一方で、不動産を利用したり事業を始めたりするときに必要になる行政手続や契約書類には、行政書士が関与できる領域があります。

代表的なのは、

  • 農地転用など農地法関係の手続
  • 開発行為に関する許可申請
  • 宅地建物取引業の免許申請
  • 土地・建物に関する一定の契約書作成

です。

ただし、不動産分野は宅建士、司法書士、土地家屋調査士、弁護士など複数の専門資格が関係します。

「不動産に関係するから行政書士ができる」と考えず、案件を工程へ分けて担当範囲を確認してください。

行政書士が不動産分野で扱う中心は「土地利用の行政手続」

行政書士の不動産関連業務として分かりやすいのが、土地を利用するための許認可手続です。

土地を持っているからといって、常に自由な用途へ変更できるわけではありません。

農地法や都市計画法などによって、利用前に許可・届出が必要になる場合があります。

行政書士は、こうした官公署への申請書類を作成し、対象となる手続では代理申請を行います。

農地を宅地・駐車場などへ変える農地転用

農地を住宅地、工場用地、道路、駐車場、資材置場など、農地以外の用途へ変更する場合には、農地転用に関する手続が必要になることがあります。

また、農地を売買したり、農業目的で権利を取得したりするときにも農地法上の許可が関係する場合があります。

日本行政書士会連合会も、農地転用の許可申請や農地法上の権利取得に関する手続を行政書士の業務として案内しています。

不動産取引そのものより前に、「その土地を目的どおり利用できるか」を行政手続から確認する仕事です。

開発行為の許可申請など土地利用手続もある

土地を造成したり、一定の目的で開発したりする場合には、都市計画法上の開発許可などが関係することがあります。

不動産取引では、土地を取得できることと、取得後に予定した用途で利用できることは同じではありません。

例えば、

  • 土地を買って事業施設を建てたい
  • 農地を宅地へ変更したい
  • 土地を造成したい
  • 既存の土地を別用途へ利用したい

といった場面では、関係法令と必要な行政手続を確認します。

「土地を買えるか」だけでなく、「買った後に目的を実現できるか」を見るのが重要です。

不動産会社を始める宅建業免許の申請も行政書士業務

不動産分野では、土地そのものだけでなく、不動産事業者側の許認可にも行政書士が関与します。

宅地や建物の売買・交換を業として行ったり、売買・交換・賃貸の代理や媒介を業として行ったりする場合は、宅地建物取引業の免許が必要です。

行政書士は、宅建業免許について、

  • 新規免許申請
  • 免許取得後の変更手続
  • 更新
  • 免許換え

などの書類作成・代理申請を行います。

ここで行政書士が行うのは、不動産を媒介することではなく、宅建業者になるための行政手続を支援することです。

土地・建物の契約書を作成できる場合もある

行政書士は、権利義務に関する書類の作成を業務としています。

日本行政書士会連合会は、その例として売買契約、賃貸借契約、使用貸借契約などの各種契約書を挙げています。

そのため、不動産分野でも、法律上行政書士が扱える範囲で土地・建物に関する契約書作成へ関与することがあります。

ただし、ここでも契約書を作ることと、不動産取引を仲介することは別です。

また、当事者間に法的紛争がある、または紛争化することが避けられない案件では、弁護士法との境界も確認する必要があります。

「契約書が作れる」ことを「不動産取引全体を代理できる」と広げないでください。

不動産の売買・賃貸を媒介するのは別の制度

不動産の売買や賃貸の代理・媒介を業として行う場合は、宅地建物取引業法の規制を受けます。

宅地建物取引業を営むには宅建業免許が必要です。

さらに、不動産取引における重要事項説明は、宅地建物取引業法に基づいて宅地建物取引士が担う業務です。

つまり、行政書士資格を持っているだけで、

  • 不動産の仲介業を営める
  • 宅建士として重要事項説明ができる

わけではありません。

行政書士は宅建業免許の申請を支援できますが、免許申請を扱うことと宅建業を営むことは別です。

行政書士と宅建士の違いを資格単位で比較する場合は、行政書士と宅建士の違いで整理します。

所有権移転など不動産登記は司法書士の領域を確認する

不動産の売買に行政書士が関係することがあっても、不動産登記まで行政書士が行えるという意味ではありません。

司法書士は、登記手続の代理や法務局へ提出する登記関係書類の作成を専門業務としています。

例えば、不動産の売却や贈与では、所有権移転登記が必要になることがあります。

住宅ローン等で不動産へ担保を設定する場合には、抵当権設定登記が関係します。

行政上の許認可と、不動産の権利を公示する登記は別工程です。

農地転用などを行政書士が担当し、その後の所有権移転登記を司法書士へ接続するといった形で、複数の専門家が一つの案件へ関与することがあります。

土地の表示登記・筆界・測量は土地家屋調査士との境界を確認する

土地を分けたり、建物を新築したりすると、不動産の「表示に関する登記」が必要になる場合があります。

土地家屋調査士は、不動産の表示に関する登記に必要な土地・建物の調査、測量、申請手続や筆界特定手続などの専門家です。

例えば、

  • 土地の分筆
  • 土地・建物の表示に関する登記
  • 土地の筆界に関係する調査
  • 登記に必要な測量

などは、土地家屋調査士の業務範囲を確認します。

行政書士にも土地利用に関する申請業務がありますが、「土地を扱う資格」という理由だけで測量・登記まで同じ資格の仕事だと考えないことが重要です。

不動産分野では一つの案件に複数資格が関わる

不動産分野は、行政書士だけで完結しない案件が珍しくありません。

例えば、農地を取得して住宅を建てる案件なら、

  1. 農地法や土地利用上の許可を確認する
  2. 必要なら農地転用・開発許可を申請する
  3. 土地の分筆・表示登記等があれば土地家屋調査士へ接続する
  4. 所有権移転等の登記があれば司法書士へ接続する
  5. 不動産業者による媒介があれば宅建業法上の手続が入る

といった形になります。

すべての案件でこの工程になるわけではありません。

重要なのは、依頼者の目的を実現するまでに何の手続が必要かを分解することです。

行政書士が不動産分野を専門にするなら「許認可との接続」を見る

行政書士として不動産関連業務を専門分野にしたい場合、単に「不動産は金額が大きいから」と選ぶのではなく、行政書士の職能と接続する場所を確認します。

例えば、

  • 農地転用
  • 開発許可
  • 土地利用に関する行政手続
  • 宅建業免許
  • 不動産事業者に関係する許認可
  • 契約書作成

などです。

そのうえで、自分では扱えない登記・媒介・測量などを他の専門家へ接続できる体制を考えます。

不動産を全部扱える専門家を目指すのではなく、不動産案件の中で行政書士が担当する工程を明確にしてください。

不動産分野を受任する前に確認すること

行政書士として不動産関連の相談を受けたら、次の順番で分けると判断しやすくなります。

  1. 依頼者が最終的に何をしたいのか確認する
  2. 必要な許認可・届出を確認する
  3. 契約書作成など行政書士業務があるか確認する
  4. 宅建業法上の媒介・重要事項説明が含まれないか確認する
  5. 不動産登記が必要なら司法書士との接続を確認する
  6. 表示登記・筆界・登記用測量が必要なら土地家屋調査士との接続を確認する
  7. 紛争性がある場合は弁護士との境界を確認する

業務を受けられるかどうかは、「不動産案件か」ではなく、案件の中に含まれる各工程から判断してください。

まとめ|行政書士は不動産取引全体ではなく行政手続を中心に担う

行政書士には、不動産分野で扱える仕事があります。

  1. 農地転用など農地法関係の手続
  2. 開発許可など土地利用に関する行政手続
  3. 宅建業免許の申請
  4. 法律上扱える範囲での土地・建物に関する契約書作成

一方で、宅建業としての媒介、不動産登記、表示登記・筆界などは別の制度・資格が関係します。

不動産案件を一つの仕事として見るのではなく、許認可・契約・取引・登記・測量へ分解してください。

行政書士の仕事内容全体と専門分野の決め方へ戻る場合は、行政書士の仕事内容とは?できること・できないことと専門分野の決め方を確認してください。

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