行政書士試験に合格しても、次に何をすれば良いのかわからない方は多いです。本記事では、行政書士の合格後にやるべきことをわかりやすく解説します。最後まで読めば、登録手続きの流れや必要書類など、合格後のキャリアパスの理解が可能です。
行政書士試験合格後にやるべきこと

行政書士試験合格後は行政書士登録をして、キャリアパスを考えます。ビジネスプランを確立しておくと、将来の独立開業が見据えやすくなります。行政書士としてのキャリアを築いていくために、やるべきことを確認しておきましょう。
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行政書士登録をする
行政書士として活動するには、行政書士登録が必要です。合格したら行政書士試験合格証書を受け取り、所属する都道府県の行政書士会に入会申し込みをします。必要書類をそろえ、登録免許税の納付および入会金と会費の支払いが必要です。
申し込み後に面接と現地調査が行われる行政書士会もあり、審査に合格すると行政書士証票と行政書士登録証が交付されます。登録後は、基本的な知識や倫理観を身に付けるために、行政書士会の新人研修と行政書士倫理研修の受講もおすすめです。
行政書士のキャリアパスを考える
行政書士試験に合格したら、独立開業や就職などのキャリアパスを考えます。建設業許可や外国人関連、会社設立など得意分野や需要の高い分野の選択も重要です。専門性を高めれば、競争力のある行政書士を目指せます。
法改正や新制度に対応できるよう、常に最新の知識を身に付け、継続的な学習を怠らないようにしましょう。将来的に社会保険労務士や宅建士などの資格取得も視野に入れると、さらなるキャリアアップにつながります。
先輩の行政書士や他の専門家とのネットワークを構築できれば、知識や経験の共有も可能です。独立開業を目指す場合は、顧客獲得戦略や業務効率化などの経営スキルも必要になります。就職の場合は、法務事務所や企業の法務部門などでのキャリアパスを検討可能です。
長期的なビジョンを持ち、ワークライフバランスや収入目標を考慮してキャリアを築きましょう。
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行政書士登録の手順

行政書士登録の手順を詳しく解説します。試験合格後に必ず行う重要な手続きです。大まかな流れを把握しておけば、スムーズに活動を開始できます。
必要書類を集める
登録には以下の書類が必要です。
- 行政書士登録申請書
- 住民票
- 履歴書
- 誓約書
- 合格証の原本またはコピー
- 身分証明書
- 顔写真
- 事務所の使用権を証する書面
- 事務所台帳
- 事務所の外観と内観の写真
- 行政書士会入会届
書類集めは時間がかかり、役所での取得が必要な場合もあるため、早めの準備を心がけましょう。必要書類は登録先により異なる場合があります。不明点があれば、事前に所属予定の行政書士会へ問い合わせましょう。
申請書と必要書類を提出する
必要書類をそろえて申請書と一緒に行政書士会に提出します。申請書には、以下の記載が必要です。
- 氏名・本籍
- 住所
- 事務所の所在地
- 資格
- 学歴・職歴
- 行政書士以外の類似資格
- 電話番号
日付は空欄にしておき、申請窓口で記入します。押印は行政書士職印ではなく、個人の認印が必要です。記入は楷書で行い、判読困難な記述は避けましょう。登録申請の期限は定められていませんが、スムーズに活動できるように早めの手続きがおすすめです。
行政書士会にて現地調査が行われる

行政書士会による現地調査は、行政書士として適切な業務を行える環境が整っているのか確認するために行われます。主な調査内容は以下のとおりです。
- 事務所の実在確認
- 設備・備品の確認
- レイアウトの確認
- セキュリティ対策の確認
- コンプライアンスの確認
- 業務計画のヒアリング
- 独立性の確認
- 生活空間との分離確認
自宅兼事務所の場合、事務所と居住スペースが適切に分離されているかが確認されます。調査は、事務所所在地を管轄する支部の支部長が行うのが一般的です。所要時間は1時間程度で、地域の特性や業務に関するアドバイスを得られる機会にもなります。
現地調査は緊張するかもしれませんが、念入りに準備をし、丁寧に対応しましょう。ただ、現地調査の度合いは都道府県によって異なります。事務所内を立会いの下、審査委員が調査を行うこともあれば、外観の調査だけで終わる場合もあります。
日本行政書士会連合会にて審査が行われる
日本行政書士会連合会が実施する審査では、申請者が登録要件を満たしているのか確認されます。主な確認事項は以下のとおりです。
- 資格要件
- 欠格事由
- 登録拒否事由
- 提出書類
- 事務所に関する情報
- 都道府県行政書士会の意見
審査の過程で、追加の資料の提出を求められる場合があります。追加資料の提出を求められたら、速やかに対応しましょう。審査の結果、問題がなければ行政書士名簿に登録されます。審査期間は通常、1〜2か月程度です。登録が拒否される場合は、事前に通知され、弁明の機会が与えられます。
行政書士合格後のキャリアパス

行政書士合格後のキャリアパスは、目標や興味、生活スタイルなどを考慮して選ぶことが重要です。多くの行政書士が選択しているキャリアパスごとに特徴を解説します。
法務事務所
法務事務所は、行政書士としてのキャリアをスタートするのに適した環境です。実務経験を積み、さまざまな案件に携われる機会を得られます。顧客とのコミュニケーション能力や文章作成スキル、行政手続きに関する知識などが身に付く場所です。先輩行政書士からの指導も期待できます。
法務事務所での経験は、将来の独立開業に向けた基盤づくりに活かすことも可能です。収入面は、固定給が多く、事務所の規模や個人の能力、経験によって異なります。
弁護士事務所
弁護士事務所では、パラリーガル(法律事務員)として勤務することが多いです。行政書士としてのキャリアを直接的に築くよりも、法務関連の知識やスキルを広げられます。
主な業務は、法律文書の作成補助をはじめ、法令・判例調査や依頼者とのコミュニケーション、事務処理などです。必ずしも行政書士としてのキャリアアップにつながるとは限りませんが、法律実務の基礎的なスキルを身に付けられます。
弁護士事務所は、行政書士業務と異なる場面も多いため、将来の目標への活かし方を考慮して選ぶことが重要です。
一般企業の法務部

一般企業の法務部での勤務は、法務関連のキャリアを積むために効果的な選択です。直接的に行政書士としてのキャリアを積めるわけではありませんが、以下のような業務に携われます。
- 契約書の作成やチェック
- 法令遵守の確認と社内啓発
- 社内規程の整備
- 株主総会や取締役会の運営サポート
- 知的財産権の管理
- 訴訟対応や紛争解決
法務部で働くメリットは、企業全体の法務に関わる幅広い経験を積めることです。将来的に独立開業を目指す場合にも役立ちます。
独立開業
独立開業は、自由度が高く、やりがいのあるキャリアパスです。事務所を開設し、業務内容や時間を自分の裁量で決められます。得意分野や興味のある分野に特化したサービス提供ができるのも大きな魅力です。
責任が伴い初期費用がかかる課題はあるものの、収入の上限がなく、努力次第では高収入を得られる可能性もあります。独立開業は、他のキャリアパスと比べるとリスクが高いです。慎重に検討しながら以下のような準備が必要です。
- 事務所開設の準備
- 開業資金の確保
- 事業計画の策定
- 顧客獲得戦略の立案
- ウェブサイトやパンフレットの作成
開業当初は安定収入が得にくいことが想定されます。安定した収入を得るには、顧客獲得のための営業活動が必要です。経営者としての責任も伴い、業務以外の事務作業も発生します。独立開業は、能力に見合っていないと苦労しやすく、行政書士としての成功のためには、入念な計画と準備が重要です。
試験合格後に行政書士として働くための準備

行政書士試験後は、働くための準備が必要になります。準備は、行政書士としての基礎を固めるための重要なプロセスです。クライアントとの信頼構築にもつなげられるよう、特に重要な準備内容を解説します。
法律知識の復習と強化
法律知識の復習と強化は、行政書士として成功するために不可欠です。合格後も以下の取り組みを通じて、継続して学習を進めましょう。
- 六法全書や法令集の確認
- 最新の判例や法改正情報のチェック
- 法律関連のセミナーや講習会への参加
- オンライン学習プラットフォームの活用
- 専門書や法律雑誌の購読
複数の取り組みにより、幅広い法律知識の維持と向上につながります。実務に役立つ知識を身に付けるには、模擬試験や問題集などでの学習も効果的です。弱点分野を重点的に復習すれば、バランスの取れた知識を習得できます。
専門用語の理解を深めるには、法律用語辞典の活用もおすすめです。法律関連のニュースや記事の定期的なチェックで、最新の法律動向を把握できます。他の行政書士との情報交換や勉強会への参加は、知識の幅を広げるための良い機会です。
実務に即した法律知識を身に付ければ、専門性が高まり、クライアントとの信頼関係も築きやすくなります。
実務スキルの習得

行政書士の合格後の成功には、実務スキルの習得も重要です。実務スキルは以下のような方法で身に付けられます。
- インターンシップに参加する
- 行政書士会主催の実務研修に参加する
- 先輩行政書士から学ぶ
- 申込書類や契約書のサンプルを分析する
- 実務マニュアルの学習をする
先輩行政書士からはメンタリングやアドバイスを受けるのが効果的です。クライアントとのコミュニケーションスキルの向上や行政機関との連絡、交渉の練習も必要になります。
業務の効率化を図るには、業務用ソフトウェアの使用方法を学ぶのが効果的です。顧客管理や請求書作成などの事務処理スキルも求められます。自信をもって業務に取り組むためには、総合的な習得が必要です。
書類作成スキルの向上
書類作成スキルの向上は、クライアントの信頼を得ると同時に業務の効率化につながります。効果的なスキルの向上方法は以下のとおりです。
- 文書作成ソフトの使用法
- 法律文書の書式や用語
- 文章力向上練習
- 各種申請書類の作成方法
- 文書の校正・推敲スキル
書類作成のスキルを身に付けることで、クライアントのニーズに合った文章を作成できます。適切な法律用語の使用や論理的な文章構成も重要です。テンプレートを使った効率化や見やすさを意識したレイアウトなどのスキルを磨けば、行政書士としての価値を高められます。
1点注意すべきことがあります。テンプレート書式がそのまま業務に使えるとは限りません。たった1文書き漏れがあっただけで、法的効力を持たない書類ができあがります。他の専門家が見たときにガッカリされないように、法律の専門家としてのスキルを磨きましょう。
試験合格後の行政書士に関するよくある質問

試験合格後の行政書士に関するよくある質問を紹介します。行政書士としてのキャリアをスムーズにスタートさせるための参考にしてください。
行政書士登録にかかる期間はどのくらい?
行政書士登録にかかる期間は通常1〜2ヶ月程度です。個々の状況や地域によっては、多少の差があります。書類に不備があると、期間が延びる場合があるため、入念に確認しておきましょう。特に2月3月は登録者が多く事務局が込み合い、手続き完了まで時間がかかります。登録審査が月2回しかないので、書類の再提出がないように、最初の許認可申請をスムースに終わらせましょう。
行政書士の登録費用はいくら?
行政書士の登録費用は、都道府県行政書士会によって異なります。一般的に総額で約20〜35万円です。正確な金額は、登録予定の行政書士会への問い合わせをおすすめします。主な内訳は以下のとおりです。
- 登録手数料
- 入会金
- 登録免許税
- 会費
- 政治連盟会費
- 必要物品費
現金や振込、クレジットカードなどの支払い方法も行政書士会によって異なる場合があります。
行政書士として独立開業するために必要な費用は?

行政書士として独立開業するために必要な費用は、以下のとおりです。
- 事務所開設費用:50~200万円
- 事務用品・備品費用:10~30万円
- 専用ソフトウェア費用:5~20万円
- 開業広告費用:10~50万円
- ホームページ制作費用:10~30万円
- 名刺・案内状作成費用:2~5万円
- 運営関連費用:30万円
合計すると、最低でも100万円かかります。余裕を持って準備する場合は、200万円以上の資金を用意しておくと安心です。一方で、費用を抑えることも必要です。もともと持っているものを使用する、専用機器の導入を段階的に行うなど、開業時は必要最小限にすることで、初期費用を50万円程度に抑えることもできます。
行政書士会の研修ではどのようなことを学べる?
行政書士会の研修では、以下のような内容を学べます。
- 顧客対応や営業のノウハウ
- 倫理規定や職業倫理
- 特定業務分野の専門知識
- IT活用や事務所経営の方法
他の行政書士との交流や情報交換の機会もあり、実務経験者からは、業務上のリスク管理についても学べます。気をつけておきたいこととして、具体的な業務手順は教えてくれません。行政書士業務の全体像をつかむのに有効な手段です。
行政書士は個人事業主なので経営感覚を身につけよう

行政書士合格後は、行政書士登録が必要です。所定の手続きを行い、登録証が交付されれば、行政書士として活動できます。
キャリアパスについては、独立開業をはじめ、法務事務所や企業の法務部への就職など、さまざまな選択肢があります。行政書士として成功するためには、継続的な知識の習得や実務スキルの向上も重要です。
行政書士合格後の手続きやキャリアパスのポイントを理解し、長期的な目標を持ちながら成功を目指しましょう。
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