点数が伸びないと、なぜ才能の問題に見えるのか
行政書士試験の勉強を続けているのに、
「点数が伸びない」
「同じところを間違える」
「他の人より理解が遅い気がする」
という状態が続くと、
「自分には才能がないのではないか」
と考えることがあります。
そう感じること自体を否定する必要はありません。
結果が出なければ、自分の能力を疑いたくなることはあります。
ただし、
点数が伸びないことだけでは、才能がないとは判断できません。
なぜなら、「才能がない」という言葉は、
- 必要な知識へ接触できていない
- 覚えた知識を取り出せない
- 問題文へ知識を当てられない
- 間違えた後の修正を検証できていない
といった複数の原因を、一つの言葉で説明できてしまうからです。
便利な説明ではあります。
しかし、その瞬間に、
「では、どこを直せばいいのか」
という検証が止まりやすくなります。
必要なのは、
「自分に才能があるか」
を先に決めることではありません。
まず、
入力・想起・再現・検証のどこで学習が切れているか
を確認します。
才能という言葉そのものについては、こちらの記事で一般的な考え方を整理しています。
→「行政書士試験は才能の試験ではない|『向いてない』と思った人へ」
能力評価で検証が止まる失敗連鎖

「才能がない」と考えてしまう人も、勉強していないわけではありません。
むしろ、
努力しているのに結果が出ないからこそ、能力そのものを原因にしたくなる
ことがあります。
停滞を自分の性質へ結びつける
問題を間違えた。
模試で思うように取れなかった。
勉強しても手応えがない。
本来なら、
「なぜ間違えたのか」
を確認するところです。
しかし、停滞が続くと、
「自分は法律に向いていない」
「理解力がない」
「記憶力が悪い」
と、自分そのものの評価へ広がることがあります。
すると、
一つの誤答が、
「この問題で何ができなかったか」ではなく、「自分はできない人間だ」という説明
になります。
こうなると、原因の範囲が大きすぎます。
自分全体を修正することはできません。
誤答原因を見なくなる
「どうせ才能の問題だ」
と考えると、細かい原因を見る意味が薄く感じられます。
なぜこの選択肢を選んだのか。
どの条件を読み落としたのか。
そもそも知識がなかったのか。
知っていたのに出てこなかったのか。
こうした確認をしても、
「結局、自分には向いていない」
で終わるなら、記録する意味がないように感じます。
その結果、
誤答を分解する工程そのものが消えます。
改善可能性を観測できなくなる
誤答原因を見なければ、
何を変えればいいのかも分かりません。
そこで、
勉強時間を増やす。
教材を変える。
別の勉強法を試す。
と大きく変更します。
しかし、
変更後に何を観測するか決めていなければ、
改善したかどうかも分かりません。
点数だけを見る。
すぐには大きく変わらない。
「やっぱり才能がない」
と思う。
こうして、
検証しないから改善が見えず、改善が見えないから才能説が強くなる
循環に入ります。
隠れている判断ミスは「自分を疑ったこと」ではない

このケースで問題なのは、
「自分に向いていないのではないか」
と考えたことではありません。
問題は、
観測する前に原因を確定したこと
です。
変えにくい能力と、変えられる工程を混ぜた
「才能」
「向き不向き」
といった言葉は、簡単には変えられないものとして扱われがちです。
一方、
- どの教材へ接触したか
- どの問題を再訪したか
- 知識を思い出せたか
- 誤答後に確認したか
は、観測できます。
そして、変更できます。
まず見るべきなのは、
変更可能な工程です。
変えられるものを確認する前に、変えにくい能力へ原因を置く必要はありません。
結果だけを見て、変化の途中を記録しなかった
点数は重要です。
しかし、点数だけを見ていると、
その途中で何が変わっているか分からないことがあります。
前回は知識そのものがなかった。
今回は知識は思い出せたが、問題文へ当てられなかった。
この二つは、同じ「不正解」でも状態が違います。
結果だけなら同じゼロです。
しかし、工程としては変化しています。
その変化を見ないと、
改善途中の状態まで「伸びていない」と判定してしまいます。
勉強しているのに伸びない状態の全体構造については、こちらの記事でも整理しています。
→「行政書士試験で『勉強しているのに伸びない人』へ|努力が積み上がらない構造」
「才能がない」が検証停止になっている観測サイン

「自分には才能がないかもしれない」と思うこと自体が問題なのではありません。
確認したいのは、
その言葉を使ったあとに、原因分析が止まっていないか
です。
たとえば、次のような状態が複数続いているなら、一度工程へ戻ったほうがよいでしょう。
- 誤答理由が「向いていない」で終わる
- 同じ問題を前回とどう違って考えたか残していない
- 教材や勉強時間は変えるが、何を改善したいのか決まっていない
- 得点以外の変化を見ていない
- 一つの停滞を、学習全体の能力評価へ広げている
- 他人の成長速度を見て、自分の能力を判断している
- 変更後の観測項目がない
この状態で、
「もっと自信を持とう」
と考える必要はありません。
必要なのは、
自己評価を一度保留して、観測できる場所へ戻ること
です。
能力評価を保留し、工程を診断する

「才能がない」と感じたら、
その言葉を否定するのではなく、
一度保留します。
そのうえで、直近の誤答を一つ選びます。
そして、どこで切れたかを確認します。
入力を確認する

最初に、
その問題に必要な知識へ、そもそも十分接触できていたか
を確認します。
テキストで扱っていたか。
過去問で見たことがあったか。
学習範囲としてまだ触れていなかったか。
ここで未学習だったなら、
問題は「才能」ではありません。
まず必要な範囲へ接触する必要があります。
入力されていない知識を、本番で取り出すことはできません。
想起を確認する

次に、
知識を自力で取り出せたか
を見ます。
解説を読めば、
「知っていた」
と思うことがあります。
しかし、問題を解いた時点で出てこなければ、
想起の工程で止まっています。
この場合は、
読む量を増やすだけでなく、
何も見ずに説明する。
問題を再び解く。
誤答へ戻る。
といった想起確認が必要になります。
「見れば分かる」と「自力で出る」は別の状態です。
再現を確認する

知識そのものは思い出せた。
それでも間違えた。
この場合は、
問題文の条件へ知識を当てられたか
を確認します。
条件を読み落としていなかったか。
似た制度と混同しなかったか。
選択肢同士を比較できたか。
知識があることと、
問題で使えることも別です。
ここで止まっているなら、
さらに暗記量を増やすことが直接の解決とは限りません。
問題を通じて、
知識をどの条件で使うのかを確認する必要があります。
検証を確認する

最後に、
間違えた後の修正が、次の確認までつながっていたか
を見ます。
解説を読んだ。
理解した。
そこで終わっていないでしょうか。
同じ問題へ戻ったか。
似た問題で使えたか。
前回と間違い方が変わったか。
ここまで確認して、初めて修正が機能したか分かります。
誤答後に再確認しないまま、
「何度勉強しても伸びない」
と判断すると、
実際には改善を検証する前に結論を出している可能性があります。
自分の判断のズレをもう少し広く確認したい場合は、こちらの記事も使えます。
→「行政書士試験で勉強しているのに伸びない人へ|あなたの『判断のズレ』を診断する(YES/NO)」
一工程だけ変更して再観測する

四つの工程を確認したら、
全部を一度に変えないようにします。
たとえば、
想起で止まっているなら、
想起確認の方法を一つ変える。
再現で止まっているなら、
問題文の条件確認を重点的に見る。
検証で止まっているなら、
誤答後の再訪を追加する。
という形です。
そして、次回の問題で変化を見ます。
全部変えてしまうと、
何が効いたのか分かりません。
必要なのは、
能力を証明することではなく、一つの仮説を検証すること
です。
変化がなければ、
「やはり才能がない」
ではなく、
「この仮説では原因を説明できなかった」
と考えます。
そして次の仮説へ移ります。
得点以外の改善も観測する

もちろん、最終的には得点へつなげる必要があります。
ただし、改善途中では、
点数以外にも見るものがあります。
たとえば、
以前は全く思い出せなかった知識を取り出せた。
選択肢を二択まで絞れるようになった。
同じ誤答を繰り返さなくなった。
間違えても原因を説明できるようになった。
こうした変化です。
これらは最終結果ではありません。
しかし、
工程が変化しているかを確認するための観測材料
にはなります。
点数だけで判断すると、
途中の改善を見落とし、
修正が機能しているのに途中で捨ててしまうことがあります。
このケースでやらなくてよいこと
「才能がない」と考えていたことに気づいても、次のようなことをする必要はありません。
- 自分には必ず才能があると言い聞かせる
- 「努力すれば絶対に受かる」と考える
- 気合いで勉強時間だけ増やす
- 教材をすべて変える
- 他人と同じ速度で伸びることを目標にする
- 一度の改善で才能説を完全に否定しようとする
- 自己評価を無理に前向きに変える
必要なのは、
自分を励ますことではありません。
観測できる工程へ戻ること
です。
まとめ|能力を結論にする前に、工程を見る
行政書士試験の点数が伸びないと、
「自分には才能がない」
と感じることがあります。
しかし、
その言葉で原因を説明すると、
入力不足なのか。
想起できないのか。
問題で再現できないのか。
修正を検証できていないのか。
が見えなくなります。
だから、
能力評価は一度保留します。
そして直近の誤答を、
- 入力
- 想起
- 再現
- 検証
の四つに分けます。
その中から一つだけ修正し、次の問題で再観測します。
「才能がない」は検証後の事実ではなく、検証を止める仮説になりやすい。入力・想起・再現・検証へ戻り、一工程ずつ確かめる。
まず、直近で間違えた問題を一つ選んでください。
そして、
どの工程で止まったのか
を一つ記録してみてください。
「自分に向いているか」を判断する前に、
まず変えられる場所が残っていないかを確認します。
筆者の不合格経験から、結果を努力不足ではなく判断ミスへ分解した例については、こちらの記事でも扱っています。