直前期になると、なぜ全範囲をやり直したくなるのか
行政書士試験が近づいてくると、
「まだ覚えていないところがある」
「この範囲は理解が浅い」
「一度やったけど、かなり忘れている」
と、未完成の部分が目につきやすくなります。
すると、
「このまま本番を迎えるのは怖い。最初から全部やり直したほうがいいのではないか」
と考えることがあります。
未完成が気になること自体は、自然な反応です。
ただし、
直前期に全範囲を最初からやり直す必要はありません。
残り時間が限られるほど、
未完成の範囲を全部埋めようとする行動は、
すでに得点へつながっている範囲の反復時間を削ります。
その結果、
新しく確認した範囲も不十分。
以前できていた範囲も再現できない。
という状態になることがあります。
直前期に必要なのは、
「全部間に合わせること」
ではありません。
まず、
本番まで守る得点源を固定すること。
そのうえで、未完成の範囲を、
- 今から追加する
- 確認だけする
- 今回は捨てる
に分けます。
つまり、問いを、
「全部間に合わせるにはどうするか」から、「本番まで何を得点線として残すか」へ変える
必要があります。
直前期の不安そのものが大きくなっている場合は、こちらの記事で一般的な構造を整理しています。
→「行政書士試験の直前期に崩れる人へ|『全部間に合ってない』で壊れる構造」
全範囲リセットで得点源が崩れる失敗連鎖

直前期に全範囲をやり直す人も、勉強を軽視しているわけではありません。
むしろ、
最後までできることを増やそうとして、今まで積み上げた得点線まで薄くしてしまう
ことで崩れます。
未完成範囲だけが目に入る
直前期になると、できる範囲より、できない範囲が気になります。
すでに何度も正解できている論点。
以前より誤答が減っている範囲。
ある程度安定して解ける問題。
こうした部分は、
「問題がない」
ため、意識に上がりにくくなります。
一方、
未学習の範囲。
忘れている論点。
苦手な分野。
は、強く目に入ります。
すると、
できない範囲だけが、学習計画を支配する
ようになります。
最初からやり直す
未完成が多く見えると、
「一度全部確認し直したほうが安心だ」
と考えます。
そこで、
テキストを最初から読み直す。
総まとめ教材を最初から進める。
全範囲をもう一周する。
という行動へ進みます。
全体へ触れているので、
「漏れを減らしている」
という安心感は得られます。
しかし、その代わりに、
- 何度も間違えている問題
- 本番で取りたい得点源
- 以前できたのに再現できなくなっている論点
への重点が薄くなります。
つまり、
全体へ薄く触れる代わりに、得点へ直結する再訪が減る
わけです。
得点源の再訪が止まる
一度できた範囲も、そのまま本番で必ず使えるとは限りません。
時間が空けば、思い出しにくくなることがあります。
問題文の条件を読み違えることもあります。
だから直前期でも、
すでに得点へつながっている範囲を維持する反復
が必要です。
ところが全範囲のやり直しを始めると、その時間が削られます。
未完成を埋めようとする。
その間、得点源の再訪が止まる。
久しぶりに戻ると、以前より不安定になっている。
すると、
「やっぱり全部やり直さないと」
という判断が強くなります。
こうして、
未完成を消そうとする行動が、既存の得点源まで崩す
循環に入ります。
隠れている判断ミスは「未完成を気にしたこと」ではない

このケースで問題なのは、
未完成の範囲を確認したことではありません。
問題は、
未完成という理由だけで、すべてを同じ優先度にしたこと
です。
未完成を同じ重要度で扱った
まだ覚えていない論点が10個あったとしても、
その10個すべてを同じように扱う必要があるとは限りません。
今から確認すれば得点へつながるもの。
すでに一度学習しており、短く確認すれば戻るもの。
時間を使っても、本番までに安定させるのが難しいもの。
状況は違います。
それでも、
「未完成だから全部やる」
とすると、優先順位がなくなります。
必要なのは、
未完成かどうかではなく、残り時間の中で得点へ接続できるか
を見ることです。
見たことがある状態を、本番で使える状態と混同した
直前期に全範囲を読み直すと、
「見たことがある」
という感覚は増えます。
しかし、
見れば分かることと、
本番で自力で取り出して判断できることは別です。
直前期ほど、
「広く見た」
という安心感より、
問題を見て再現できるか
を確認する必要があります。
だから、得点源は、
読むだけでなく、
過去問や誤答確認などを通じて再現できる状態を維持します。
残り時間ではなく、不安の強さで配分した
直前期には、
「ここが怖い」
という感覚が強くなります。
しかし、
最も不安な範囲が、
最も時間を使うべき範囲とは限りません。
不安が強いからといって、
大きな範囲を新しく始めれば、
他の得点源を削ることになります。
必要なのは、
不安の大きさではなく、残り時間と得点への接続可能性で配分すること
です。
行政書士試験全体を満点ではなく合格点から考える判断軸については、こちらの記事で整理しています。
→「行政書士試験は満点を取る試験ではない|180点思考の話」
全範囲リセットに入っている観測サイン

直前期に復習範囲を広げること自体は、必ずしも問題ではありません。
確認したいのは、
未完成を埋めるために、得点源の維持が止まっていないか
です。
たとえば、次のような状態が複数続いているなら、一度配分を見直したほうがよいでしょう。
- テキストを最初のページから読み直している
- 得点できていた範囲の過去問や誤答確認が止まっている
- 新しく追加した範囲を、本番でどう得点へつなげるか説明できない
- 残り時間と予定量を比較していない
- 「今回はやらない」と決めた範囲が一つもない
- 未完成という理由だけで、新しい範囲を追加している
- 以前できていた問題を、最近再確認していない
ここで、
「直前期は何日前から」
「何点取れる範囲を守るべき」
という一律の基準を決める必要はありません。
見るべきなのは、
今の配分で、本番まで得点源を維持できるか
です。
直前期に守る範囲を固定する

直前期に予定が膨らんでいる場合は、
未完成範囲から考えるのではなく、
まず守る範囲から決めます。
得点線を先に残す
最初に、
本番まで反復から外さない範囲
を決めます。
たとえば、
- 過去問や模試である程度再現できていた範囲
- 間違いが減ってきた範囲
- 繰り返し確認している誤答群
- 行政法・民法など、現在の主戦場となっている学習線
です。
具体的にどの科目や何点分を固定するかは、現在地によって変わります。
大切なのは、
未完成範囲を追加する前に、すでに得点へ接続している範囲の維持枠を確保すること
です。
行政法・民法を主戦場として維持する考え方については、こちらの記事で整理しています。
→「行政書士試験で最優先すべきは行政法と民法です|主戦場を失うと崩れる」
未完成を三つに分ける
守る範囲を固定したあとで、未完成の項目を三つへ分けます。
今から得点へ接続できる
短い確認や演習で、本番までに使える可能性があるものです。
ここは追加候補になります。
確認だけ行う
ゼロから深く学び直すのではなく、
最低限の確認だけ行う範囲です。
「ここに何があるか」
「どんな論点だったか」
程度の確認に留める選択もあります。
今回は捨てる
残り時間と優先順位を考えると、
今から大きく時間を使わない範囲です。
「捨てる」というと怖く感じるかもしれません。
しかし、
全部を救済しようとして得点源まで壊すより、守る範囲を明確にするための判断
として使います。
追加するなら停止条件を置く
未完成範囲へ時間を使う場合も、
終了条件を決めます。
たとえば、
- 使う時間の上限
- 確認する範囲
- 解く問題の単位
などです。
「分かるまで」
「不安がなくなるまで」
ではなく、
事前に区切りを置きます。
そして、
追加した結果、
得点源の反復が消れた。
行政法・民法へ戻れなくなった。
誤答確認が止まった。
のであれば、追加量を減らします。
追加範囲より、守る範囲を優先する
という順番を崩さないようにします。
直前期は「増やした量」ではなく「再現できる線」を見る

直前期になると、
「今日どれだけ多く確認したか」
に意識が向きやすくなります。
しかし、本番で必要なのは、
勉強した量そのものではありません。
必要な場面で、
知識を思い出し、
問題文の条件へ当てはめ、
答えを選べることです。
だから週次や日々の確認でも、
- 得点源へ戻れたか
- 同じ誤答が減ったか
- 一度できた問題を再び説明できたか
- 新しく追加した範囲が実際に使える状態になったか
を見ます。
新しい範囲へ触れただけなら、
まだ得点線へ接続したとは言えません。
「見た範囲」ではなく「再現できる範囲」を守る
ことが重要です。
このケースでやらなくてよいこと
直前期に不安が強くなっても、次のようなことまで行う必要はありません。
- 全範囲を最初から読み直す
- 新しい総まとめ教材を追加する
- 未完成範囲を全部同じ優先度にする
- すでに得点できている範囲を放置する
- 新規学習が終わるまで過去問を止める
- 睡眠を削って予定の帳尻を合わせる
- 「全部やった」という状態を目標にする
必要なのは、
未完成をゼロにすることではありません。
本番で使える得点線を残すことです。
まとめ|直前期は、未完成を消すより得点線を守る
行政書士試験の直前期になると、
できていない範囲が気になります。
そこで全範囲をやり直したくなることがあります。
しかし、残り時間が限られているほど、
未完成を全部埋めようとすると、
すでに得点へつながっている範囲の反復まで削られます。
必要なのは、
まず守る範囲を固定する。
そのあとで未完成を、
- 今から追加する
- 確認だけする
- 今回は捨てる
に分けることです。
守る範囲を先に固定し、未完成は追加・確認・廃棄へ分ける。直前期の配分は不安の大きさではなく、本番へ残せる得点線から決める。
今の計画を見て、
まず三つ書いてみてください。
「本番まで守る範囲」
「今から追加する範囲」
「今回は捨てる範囲」
未完成をすべて消すのではなく、本番まで何を残すかを決めるところから直前期の計画を組み直します。
そして、計画が崩れたあとも既存の学習線へ戻る考え方については、こちらの記事で整理しています。