全部覚えてから進もうとすると、なぜ覚えられないのか
行政書士試験の勉強をしていると、
「前にやったところを忘れている」
「まだ覚え切れていない」
「この状態で次へ進んで大丈夫なのか」
と不安になることがあります。
そこで、
「全部覚えてから次へ進もう」
と考えることがあります。
丁寧に覚えようとすること自体は、間違いではありません。
ただし、
忘れない状態を一つの範囲の完了条件にすると、同じ場所の読み直しが続き、全体の反復へ入れなくなります。
必要なのは、一度で記憶を完成させることではありません。
今の時点で、
- 自力で取り出せること
- まだ取り出せないこと
を分ける。
そして、取り出せなかった範囲には再訪時点を残し、先へ進みます。
つまり考えるべきなのは、
「どうすれば一度で全部覚えられるか」ではなく、「今何を取り出せて、何を次に再訪するか」
です。
忘れること自体への不安が強くなっている場合は、こちらの記事で一般的な構造を整理しています。
→「行政書士試験で『全部覚えられない』と苦しくなる人へ|暗記崩壊の構造」
暗記を完了条件にする失敗連鎖

暗記で止まる人は、勉強していないわけではありません。
むしろ、
同じ範囲を何度も確認しているのに、先へ進めない
という状態になります。
忘れた箇所を最初から読み直す
一度勉強した範囲を見直して、
「かなり忘れている」
と感じることがあります。
そこで、最初からテキストを読み直します。
読み直せば、
「そうだった」
「これは見たことがある」
と思い出せます。
すると、理解できたように感じます。
しかし、
見れば分かることと、何も見ずに取り出せることは別です。
教材を開いた状態では、
「分かっている」
と感じても、
閉じた瞬間に説明できないことがあります。
それでも読み直しを続けていると、
読む回数は増えても、
自分が何を取り出せるのかを確認する機会は増えません。
同じ範囲から抜けられない
次に、
「まだここを完全に覚えていない」
という理由で、同じ範囲へ留まり続けます。
一つでも曖昧な部分がある。
用語を正確に言えない。
例外を忘れている。
すると、その範囲全体を、
「未完成」
と判断します。
しかし、
未記憶の部分が一つあることと、その範囲すべてをやり直す必要があることは同じではありません。
一部の曖昧さを理由に全体を止めると、次の論点へ触れる機会も減ります。
後の論点と比較することで分かること。
別の問題を解くことで理解がつながること。
そうした機会にも触れられなくなります。
全体の再訪周期が消える
一つの範囲に長く留まっている間にも、以前学んだ別の範囲は時間が空いていきます。
すると、
一つの範囲を完璧にしようとしている間に、
別の範囲を忘れます。
そして戻ってみると、
「ここも忘れている」
と感じます。
また最初から読み直す。
こうして、
一部を完成させようとするほど、全体への再訪回数が減る
という逆転が起こります。
結果として、
「自分は覚えられない」
という感覚がさらに強くなります。
隠れている判断ミスは「覚えようとしたこと」ではない

このケースで問題なのは、暗記を重視したことではありません。
問題は、
記憶を一度で完成させる対象として扱ったこと
です。
忘却を異常とみなした
一度勉強した内容を忘れると、
「勉強した意味がなかった」
と感じることがあります。
しかし、このケースで見るべきなのは、
忘れたかどうかだけではありません。
前回より、
- 思い出せる範囲が増えたか
- 間違い方が変わったか
- 必要な言葉を早く取り出せるようになったか
という変化です。
記憶を、
「覚えている/忘れている」
の二択だけで見ると、途中の変化が見えなくなります。
読み直しを想起確認の代わりにした
教材を見ると内容を理解できます。
そのため、
「これは覚えている」
と思いやすくなります。
しかし、試験では教材を見ながら答えるわけではありません。
必要なのは、
自分の中から知識を取り出せるか
です。
だから、復習するときも、
いきなり読み直すのではなく、
まず自分で答えてみる。
説明してみる。
理由を言ってみる。
その後で確認します。
読み直しは必要ですが、
想起できたかを確認した後に使う
ほうが、戻る場所を絞りやすくなります。
過去問を繰り返す意味については、こちらの記事でも整理しています。
→「行政書士試験で過去問を繰り返せと言われる理由|伸びる人との違い」
完了基準を感覚に置き、再訪条件を持たなかった
「ちゃんと覚えた気がする」
「まだ不安がある」
という感覚だけで進行を決めると、終了条件が曖昧になります。
不安は、すべて覚えたとしても完全には消えないかもしれません。
だから、
「全部覚えたら進む」
ではなく、
次に戻る対象が分かったら進む
という条件へ変えます。
今できなかった場所を特定した。
再訪する箇所を決めた。
次にいつ確認するか残した。
そこまでできれば、一度先へ進めます。
暗記完成待ちになっている観測サイン

次のような状態が複数続いているなら、
暗記そのものではなく、進行条件を見直したほうがよいでしょう。
- 同じページを何度も読んでいるが、閉じて説明していない
- どの状態になれば次へ進むのか説明できない
- 一つでも曖昧だと範囲全体をやり直している
- 復習日を決めず、「覚えたら終わり」と考えている
- 問題で正解した理由より「見覚えがあったか」を見ている
- 一部の未記憶を、学習全体の未完成へ広げている
ここでも、
「何%正解したら進んでよい」
という一律の基準を決める必要はありません。
見るべきなのは、
再訪すべき場所を特定できているか
です。
記憶を完成させず、再訪で維持する

暗記で止まっている場合は、
読む量をさらに増やす前に、
学習の順番を少し変えます。
先に想起してから確認する
復習するときは、まず教材を閉じた状態で確認します。
たとえば、
- この論点は何だったか
- なぜこの選択肢が誤りなのか
- 条件は何だったか
を自分で答えてみます。
できた部分は、そのまま進みます。
できなかった部分だけ教材へ戻ります。
これによって、
「全部読み直す」から「必要な場所だけ戻る」
へ変えられます。
今は進む条件を決める
一つの範囲を終える条件を、
「全部覚えた」
にしないようにします。
たとえば、
- できない場所を特定できた
- 誤答理由を残した
- 次に再訪する項目が決まった
という機能で区切ります。
すべてを正解できなくても、
次に何を確認すればよいか分かっているなら、先へ進めます。
完璧な正答率を一律の基準にする必要はありません。
再訪時点を残す
先へ進むなら、
戻る条件を残します。
「またそのうち復習する」
ではなく、
どの範囲へ戻るか。
何を確認するか。
いつ再訪するか。
を記録します。
重要なのは、
再訪時に、
前回より自力で取り出せるようになったか
を見ることです。
単に何周したかだけではなく、
再訪によって状態が変わったかを確認します。
過去問を何回転するかに意識が向きすぎている場合は、こちらの記事も参考になります。
→「行政書士試験の過去問は何回転すべきか|回数より危険なこと」
このケースでやらなくてよいこと
忘れることが不安でも、次のようなことまでは必要ありません。
- 忘れなくなるまで同じページを読み続ける
- テキストの内容を全部ノートへ書き写す
- 新しい暗記教材を追加する
- 一回で完璧に説明できる状態を目指す
- 一部を忘れたことで学習全体をやり直す
- 忘れた自分を能力不足と決める
必要なのは、
忘れない状態を作ることではなく、忘れても戻れる反復を作ることです。
まとめ|記憶は完了ではなく、再訪で作る
行政書士試験の知識を、全部覚えてから先へ進む必要はありません。
「忘れた」
と感じるたび最初から読み直していると、一つの範囲から抜けられなくなります。
そして、全体の再訪回数が減ります。
必要なのは、
まず自力で思い出す。
できなかった場所を特定する。
再訪する時点を残す。
そして、一度先へ進むことです。
忘れない状態を待たない。先に取り出し、できなかった場所を特定し、再訪時点を残して進む。
まず、今勉強している一つの範囲について、
教材を閉じて説明してみてください。
そして、
言えなかった場所と、次に戻る時点だけ
を記録します。
全部覚えたかどうかではなく、
次にどこへ戻ればよいかが分かれば、その範囲から一度先へ進めます。
高い完成度を開始条件にして学習が止まっている場合は、こちらの記事も参考になります。